yumiko

ダーマーのyumikoのネタバレレビュー・内容・結末

ダーマー(2022年製作のドラマ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

17人の青少年を殺害し、屍姦、死体切断、人肉食を行った実在の連続殺人犯ジェフリー・ダーマー(エヴァン・ピーターズ)のお話。

ストーリーは逮捕から始まり、幼少期や青年期、数々の犯行を時系列が前後しながら、本人、父、被害者、隣人の目線で進む。作品の出来は素晴らしかったと思うんだけど、内容が内容なのでこのスコア。

ゲイで特に黒人男性が好みだったダーマー。まだ人種差別も横行し、同性愛に関する偏見も色濃い1970-80年代だったのも、被害拡大の要因に。

ダーマーを演じる、エヴァン・ピーターズ、素晴らしかった。普段は穏やかな喋り方、でも時々キレる。黙々と犯行に及ぶ姿が恐ろしく、胸が気持ち悪くなるほど。実際の写真などと比べても、再現度が高いのかと。

父親のライオネルを演じたリチャード・ジェンキンスの、惨めでリアルな演技も光ってました。

周囲はみんなその悪臭に悩まされる。臭いはしないのに、ものすごい異臭の中に居るような感覚もあり、より一層不気味に思える。

ダーマーが悪いのは明白なんだけど、幼少期に不仲で愛情をそそいであげなかった両親、幾度の通報にも対応しなかった警官など、ひどい要因が多い。

特に腹立たしいのは、停職になった警官が大手を振って優秀賞など受賞するところ。本人たちが微塵も悪いと思ってないところに驚愕する。

ラスト、キリスト教の洗礼をうけ、罪が洗い流されてような晴れやかなダーマー。獄中で撲殺されるんだけど、死後、本人の意に反して研究のため脳だけ冷蔵庫で保存されてるの見て笑っちゃった。

結局、その脳の扱いについて裁判になるんだけど、その判事が言ってた言葉が、この作品の言いたいところなのかなと。
「人は、なぜダーマーのような人間がいるか、知りたい誘惑が湧くもの。そこに真の危険性がある。その答えは簡単ではなく、行動の理由は永遠に謎。それは、不愉快な真実だが受け入れなければならない。」

この作品で、また遺族の方がが悲しい思いをしているというのも目にして、心が痛む。

===
以下は、備忘録。
隣人の女性グレンダが本当にかわいそう。職場で辛くて泣いてるだけでキャリアに影響なんて。まだ人種差別が残ってる時代。

特に7話のジャクソン牧師が市に乗り込むくだりは、よかった。
これは、社会悪の問題だ!警察の不正、地域社会の放置、有色人種、若者、ゲイの軽視だ!と詰め寄る。

事件発覚後、父がダーマーと面会した時に、自分やその後妻、祖母に対するどう責任を取るんだ!追及するところがもう、恐ろしい。被害者のことなんて微塵も頭にない。
ダーマーが幼少の頃、動物の死体を一緒に解剖したことを思い出すと話すと、責任を押しつけるなという。「私は無関係だ」そしてジェフを妊娠中に服薬をした元妻を責める。ダーマーの裁判でも怒鳴り合いの喧嘩。

父親が書いた本の書評が良くて、喜ぶシーンとか、映画化に浮立つところとか。ダーマーのことを漫画にして富を得る者とか出てきたけど、Netflixでこの事件について見てるのも同じかななんて、考えたり。

通報したダーマーの隣人グレンダが市民功労賞を受賞したのと同時に、グレンダの通報を無視し続けた無能警官が優秀警官受賞する狂気。

アパートの住人が悪夢を見るので廊下に集まって一緒に寝るくだりは、心が痛む。
被害者へのイタズラ電話や誹謗中傷。

貧しい被害者が多く、葬式をするにも一苦労な状態。
テレビでは、ダーマーや父親のインタビューを垂れ流し、アパートには野次馬が平気で入り込んでくる。

そしてダーマーのファンの存在。
ダーマーの所持品がオークションにかけられるが、全て買い占めファンのコレクションにならないように廃棄した、白人男性。ちょっとホッとする。
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