ルビー婆さん

ダーマーのルビー婆さんのネタバレレビュー・内容・結末

ダーマー(2022年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

異常連続殺人犯の生い立ちから事件、被害者の遺族たちの訴え。警察の怠慢、人種や同性愛者への差別。

『なぜ?』

それがいつまでも続く。
構成はいくつかの時間軸が交互に入れ込まれ、『なぜ?』の気持ちを大きくし、『なぜ?』を引きずり続けることになる。

ドラマ構成はよく、巻き込まれた人たち、被害者の遺族の気持ちもよくわかる。
わからないのは、結局1人だけ。

ジェフリー・ライオネル・ダーマー。
1960年5月21日生まれ。

ジェフを演じたエヴァン・ピーターズ。
『POSE』の時、脇役ながらも印象に残ってたけど、同じ人だとは思わなかった。
今回はダーマーの役ははまり役なのか、異様な雰囲気が滲み出てる。

一室で凄惨な事件が起きていて、アパートの隣人は何度も通報してたのに警察は来たことがなかった。
他にも何度か警察に接触したのに、警察はあまり深く疑わないので、ジェフは逃れている。
あの時にあの中身を見ていたなら…
この連続殺人事件は警察の怠慢がかなり影響している。
有色人種への軽視と。

母親の妊娠中の薬の飲み過ぎ、家庭環境の問題、動物の解剖、同性愛について話し合いができなかったこと…
原因を見つけたくても、そこからは導かれない。
モンスターが生まれるのは、なぜなのか、わからない。

ただ、ジェフの中で複数の事項が組み合わさってしまった。寂しさや性癖が何に結びついてしまうのか。
しかし、誰しもこんなふうに結びつけたりしない。
いろんな経験者がいて、酷い目にあった人たちがモンスターになるわけではない。

どこで変わるとか、生まれつきなのか、後天的なのかも、検討してもわからない。
遺伝子要因も兄弟で1人は普通に育ち、1人はモンスターになる。遺伝子だけでは説明もつかない。

最初、ジェフは事件を起こしてしまって後悔している(ようにドラマでは描かれているが、本当はどうだったか、わからない。後悔というよりびっくりしてただけかも)
愛されなかった自分、同性愛であることを話したいのに誰も聞こうとせず避ける、人間関係がうまく運べずに誰もが離れていく寂しさ、それ故に引き止めたくて結果的に殺人を犯す。思い通りにならなければ殺してしまう。心がなくなっている。

家族も大変である。
母親は最初から全くひどいもので、結局、逃げてしまったが、父親はどうしたらいいのか悩んでいる部分はある。
こんなふうな子供がいたら、気が狂ってしまうかもしれない。

遺族はこういう事件に巻き込まれると一緒に大変な辛い目に遭ってしまう。
警察がもっと早くに対処してたら、ここまで大変なことにはならなかった。

モンスターをヒーロー扱いしたりする人間がいることも不快である。アパートの前で写真を撮る人もいたが、現代でもこういう人間がいる。不快である。

ダーマーの無感情な感じ、何を考えているのかわからない表情。
彼の考えを普通に考える人間が端から端まで理解することは困難。明確な理由がほしいけれど、ダーマー父が言うように、サインがわかればいいけど、それも難しい。結局は結果論。後で考えれば、実際に自分が親の立場になってしまえば、全てが原因に思えたりするだろう。

原因は何か知りたい。
でも、結局、わからない。