セレソンQ

仮面ライダーBLACK SUNのセレソンQのネタバレレビュー・内容・結末

仮面ライダーBLACK SUN(2022年製作のドラマ)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

何がしたかったのか、全く意味不明の作品でした。
邦画のダメな所が凝縮されて10時間にストーリーそっちのけでひたすら薄っぺらい差別と政治劇が展開されます。仮面ライダー50周年記念作品と銘打って誰も望んでいないゴミが出来上がりました。一体どうしてこんなことになっていまったのでしょうか。本作のダメな所は以下の通りです。

1.設定が仕上がっていない
まず本作のリアリティラインがあべこべで突っ込みどころが多すぎてノイズになるレベルです。怪人の単体の戦闘力が人間を凌駕しているのか、あるいは見た目が怪人なだけで人間とは遜色ないのか、あるいは怪人の中でも戦闘特化の個体がいるのか、ここの設定がしっかりしていないとそもそも差別だなんだと議論することすら不可能です。本編では最後までここの設定が曖昧でした。怪人のルーツや地位についてはグダグダ時間を割いてないでまずはそこを明瞭にすべきです。それからヘブンの設定が全然生きてこないのも謎です。人間を原材料にしている万能薬なら怪人が人間を襲う理由になると思うのですが、そういうわけでもない。ヘブンにされた人間側の主張が描かれることもなく、本当にただのバフアイテムとしてしか機能していないのが残念でした。物語の根幹に関わる設定として、怪人の軍事利用がありますが、何をどのように運用するのか一切説明されません。他にも創生王関連の展開も全て終盤で特に意味のない茶番でしたという種明かしをしてしまったせいで物語そのものが無意味に感じます。設定からこんなにグダグダでは物語を作る以前の問題であると思います。

2.演技のレベルが低すぎる
良かったのは信彦と葵くらいでした。後は軒並みひどい仕上がりでした。特に葵の幼馴染とルー大柴は最悪でした。全体的な演技のつけ方もいちいち大声で叫んだり泣きわめいたり、邦画のダメな所が全面に出ていてかなりきつかったです。

3.バトルの気持ち良さがない
これは本作に限った話でありませんが、昨今のライダーはとにかくバトルパートが単調で見ていて飽きます。シチュエーションは昼間の屋外か室内に限定されていて、大人向けと銘打ってやることは申し訳程度の流血表現だけです。昭和ライダーのような大爆発をやれとは言いませんが、平成初期には夜間や雨天での戦闘に加えて、河にダイブしたり泥水に押さえつけられるといった荒々しい表現がありました。制作現場の働き方改革やスーツの損耗を加味して昨今の日アサではできなくなってしまった表現を本作には期待していたのですが、そういった部分が見られなくて残念でした。殺陣もあまり魅了されるシーンもなく、人体破壊表現ばかり多用して印象をよくしようとしているのも底の浅さを感じます。

4.構成が杜撰すぎる
そもそも過去編に物語の半分を割いているのが下手です。現代の時点での情報で大方の要素は推測できるので、過去編のパートは本当に退屈です。それなら1話丸々全て過去編に費やす話数を用意してやった方がまだよかったです。それから葵が怪人にされる展開も、葵があまりにも精神的にタフすぎて悲壮感がなく、葵は物語のために都合よく戦闘力を強化されただけに見えてしまいます。怪人差別者達や幼馴染の家族のパートも時間を割いた割には、結局そことは関係ない動機で光太郎も信彦も葵も行動をしているので無意味な要素になってしまっています。そういう感じでとにかく構成が下手なせいで全体的なテンポが死ぬほど悪く10話を見るのは本当に苦行でした。

5.説教が薄い上にしつこすぎる
本作の一番の問題点かと思います。差別がどうのこうのと極めて薄っぺらくて中身のない説教を約10時間されます。仮面ライダー50周年記念作品でなんでこんなものを観なければならなかったのか甚だ疑問です。1でも述べましたがそもそもリアリティラインの設定が上手くいっていないせいで、本作で語られる全てが上滑りしてしまいます。それに加えて露骨に昨今の政治シーンを再現した要素がふんだんに盛り込まれていて非常に不快でした。在日問題、ヘイトスピーチ、憲法9条などネットで調べた難しい問題をとりあえず列挙してみましたという感じで何やら踏み込んだ気でいるようですが、これらの問題に対する本作なりの回答を提示せずに逃げているのは不誠実であると思います。そして仮面ライダー50周年記念という作品をそんな出来損ないのプロパガンダに仕立て上げたことは許されることではないと思います。いえ、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!といった所です。

結局本作で上がった所は10話の冒頭の初代ブラックのOP再現だけというのは本当に残念でした。人気俳優を起用して大々的に宣伝をかけている本作は仮面ライダーを見たことがない層にもアピールできるチャンスであったのに、こんな古参向けの接待要素くらいしか褒めるところがないのは悲しいことです。この絶望を来年に公開を控えるシン・仮面ライダーが払拭してくることを祈るばかりです。