セレソンQ

贖罪のセレソンQのネタバレレビュー・内容・結末

贖罪(2012年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

どうしようもないバカ女が自業自得で起こした悲劇に偶然巻き込まれた子供達の人生がめちゃくちゃにされる話です。

小泉今日子演じる女が本当にどうしようもないクズです。各話ごとに態度や雰囲気がバラバラで統一感がなく、やってることも一貫性がないので非常に薄っぺらいです。そもそも娘が殺されてやることが居合わせた子供達の監視の時点で何がしたいんだという感じです。普通は事件の真相究明に取り憑かれる所ですが、死んだ娘と同じ年の子供を仇のように睨んで何がしたいのでしょう。しかもちゃっかり新しい子供を作ってる始末。新しい子供はおろか娘の死で夫婦関係が壊れ夫とも別居中か離婚の方が自然な流れです。この薄っぺらさも最終回の種明かしになってみると娘の死は自分が蒔いた種だったというさらにしょーもないオチで、しかも最後は自分の犯した罪が裁かれることはなく娘に断罪を懇願する始末です。そこはまず迷惑をかけた4人の子供達に謝罪するのが筋だろと思いますが、バカなのでそこまで頭が回らないのでしょう。とにかく娘を失い狂った母親をファッションでやってるだけで本当はクズみたなことを繰り返した結果因果応報で跳ね返ってきて、その結果さらに関係のない人間にまで飛び火させる災厄の女です。

問題なのはこの大オチの部分があまりにも薄っぺらいせいで、1~4話の物語が全部上滑りしてしまうことです。子供の頃に強烈な体験をして歪んでしまった子供達の話なのに、それは彼女達とは全く無関係で明確な理由が存在する事象だとすると、子供達の後悔や葛藤が全て空虚なものになってしまいます。
4人の子供達は事件の日にエミリをひとりで行かせたことやその後選択した行動を後悔していますが、この事件が最初から私怨でエミリを殺す話だったとするといくらあの日彼女達が正しい行動をしようがその日だけはエミリが死なないだけでいつかは絶対に死にます。よって4話までのストーリーが最終回で全て台無しにされることになってしまいました。
典型的な終盤でインパクトのある大オチを見せるために取った愚策が物語全体を矮小化させてしまうパターンです。

あと原作はどうなのか知りませんが、偶然ラジオから聞こえてきた声が15年前聞いた殺人犯のものと同じだったとか、子供がイタズラで母親の親友の遺書を隠す遊びしてたら偶然本当の父親がそれ発見したとか、包丁持ち歩く事件の重要参考人から話だけ聞いて監視も付けずに解放し犯人もみすみす死なせる警察とか、なんというか真面目に作劇をする気があるんですかね。黒沢清の映画は脚本がゆるいというより奇天烈な展開を辿る作品が多く、実際そういう作品は大好きなのですが、本作は単純なレベルの低さを感じました。

映像面はいつもの黒沢清といった感じで概ね良かったですが、所々ドラマだからなのか安っぽさを感じました。もともと黒沢清は低予算で良いもの作りキャリアを築き上げた監督なのにそういうことになってしまのは少し残念でした。しかし第1話のクオリティだけは他と比べても別格に良く仕上がっており、なんなら1話の時点で見たいものは大方見れたので満足です。