セレソンQ

鉄の骨のセレソンQのレビュー・感想・評価

鉄の骨(2020年製作のドラマ)
4.5
池井戸作品はエンタメとして圧倒的に面白いのに加えて、自分の知らない世界の裏側を濃密に勉強できる素晴らしい作品が多いが、今作においては自分が身を置いていた世界だったので没入感がすごかった。
今作に限らない話なのだろうが、池井戸の扱う業界の描き方はこうあって欲しいという願望が随所に込められているが、実際の業界というものはドラマよりももっとドライで救いようがない世界だ。
特に建設という業界においては、この世界が政治と反社に通じている限りは健全化はできるはずがない。
談合を行えばゼネコンは企業努力を怠り政治家との癒着が進み業界は腐る。
だが談合をしなければ際限のない値下げ競争が起こり現場が腐る。
ドラマでは主人公達の努力で大幅コストダウンの目処を立てたが、実際の現場では人件費、設備費の削減と借入機械の故障修理費の踏み倒しが横行し現場は劣悪なものになる。最後は人も集まらず反社や国籍不明の外国人が跋扈することになる。

このドラマの主人公は崇高な理念を持ち、負けず嫌いの根性で足掻いているが、この業界に入ったほぼ全ての若手は腐りきった業界に早々に見切りをつけ足を洗う。業界に残るのは家族を養わないといけない人間か、ギャンブル、風俗のいずれかのあるいは両方の中毒で散財を辞められず抜け出せない人間のどちらか。そしてその大半が後者に該当する。

建設は業界そのものも腐ってるし、働いてる人間も腐っているそんな地獄の世界です。