セレソンQ

ロキ シーズン2のセレソンQのネタバレレビュー・内容・結末

ロキ シーズン2(2023年製作のドラマ)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

最後まで観るとそこそこ良かったような気がするが、全体的には微妙だった。そもそもロキが良い奴になる展開があまり好みではない。

シーズン1はロキがパラレルワールドの自分自身に心惹かれていくという展開が素晴らしかった。ナルシストで傲慢なロキが好きになる相手は別世界の自分であるシルヴィーだったという設定は実に秀逸で、シルヴィーを通してロキは他者を尊ぶ考えを身につけていき最終的にはロキは自分自身の欲望のためではなく自分の愛する者のために戦うという展開だった。
しかし自分の愛する者のために戦うというのは結局独善的な考えで、無差別に人を助けるヒーローとは違う。加えてロキはシルヴィー=自分自身のために戦うということは元々のロキの考え方から構造的には変化していないのが実に見事だった。

これがシーズン2になるとロキとシルヴィーとの関係が何もなかったかように処理されてシルヴィーもロキのことを鬱陶しく思っているような関係に変更されていた。そこにとってつけたような仲間の絆要素が追加されシーズン2のメインに据えられてしまった。ロキが仲間のために頑張るようなタイプにはどうしても思えないのでそこは最後までノイズだった。たしかにカーンから世界の真実を知らされて自分自身には帰る場所もないという状況がロキを変えたとも考えられるが、だからこそロキはよりシルヴィーを守ることに固執していく展開にするべきだった。そしてシルヴィーを救う過程でTVAの仲間達との絆が深まり、終盤にシルヴィーか世界かの選択を迫られて、そのどちらも救うためにロキが真の意味で他者を尊ぶ考え方を獲得し、自己を犠牲にしてシルヴィーと世界を両方守る選択する。悪役だったロキがついに無差別に全ての他者を救う=ヒーロー=神になったという展開の方が綺麗だったと思う。
今作はロキは初めから世界の秩序や仲間を尊ぶ考えを有していて本当にただの良い奴だった。加えてシルヴィーが仲間の一人にすぎないという位置付けだったので要所に現れて状況をかき回すだけの存在になってしまっていた。

映像的な面でもシーズン1はレトロフューチャーな世界観から死滅する直前の惑星や大量のロキが住む世界など毎話実にワクワクする世界があったが、シーズン2は舞台が全部地球でしかもその年代も200年くらいしか幅がなく面白味にかけた。
あとTVAの組織内でのゴタゴタに時間をかけすぎている。レンスレイヤーやブラッドウルフのパートが終わってしまえばなんの意味もないパートだったうえそっちのパートが始まるとロキやシルヴィーがでてこなくなるので観ている時もかなり退屈に感じた。
アクションシーンも追いかけっこと魔法を飛ばすだけのもっさりしたものでカッコ良くなかった。シーズン1は結構格闘技アクションもちゃんとやっていただけに残念だった。
それ以外ではやはりタイムスリップに関する設定がかなり不安定でわかりにくかった。全体的にも今何が起こっていてど何をするべきなのかがわかりにくい。シルヴィーは気分で登場するし、ロキのタイムスリップは肉体ごと戻ってロキが同じ場所に二人存在する時もあれば、肉体に記憶だけが飛んで一人しか存在しない時もあって、その時々のストーリーに合わせて都合よくその二つが使用されるのも違和感があった。

そういうわけ大傑作だったシーズン1と比べるとテンポも悪く映像面でも劣り、こっちが期待した展開もなく残念だった。