おそば屋さんのカツカレー丼

ロリエ・ゴドローと、あの夜のことのおそば屋さんのカツカレー丼のレビュー・感想・評価

5.0
最高…もう、最高!!!
毎週金曜日が楽しみで本当に飽きる暇がなかった。
ドラマは1日で一気に観たりせずに、時間を空けて少しずつ観たい派なのだけれど、これは5時間一気に通して観たくなる作品だ。

家族ほど「愛憎渦巻く」という言葉が似合う関係性はない。
どれほど上手くいっているような家族であったとしても、そこでは誰かがスケープゴートとなった上で、家族という滑稽にも見える悲喜劇が上演される。例え真実を贄としたとしても。それがラルーシュ家に埋め込まれた運命。その物語が前史となり、皆が背負わされた罰として形を変えて何度も再演される。
家族とはスリラーなのだ。恐ろしければ恐ろしいほど、憎ければ憎いほどその渦は大きく力強くなっていく。それでも…それでもと言ってしまうところがドラン。

家族の抱えた謎、その決して全貌の見えない恐ろしさを象徴するかのように多用される顔に寄ったカット。部分を強調させることで全体の不在/不可視を空間的に魅せていく。顔は真実を語ることはないけれど、何かを雄弁に語っている。ドランのこれまでの作品でも空間を印象付ける演出はたくさんあったけれど、今作はそれらとは角度が違っていた。

キャラクターとしてはステファニーが好きだった。第4話、エリオットとベッドで横になりながら彼が話せなかったことを話す時の表情がすごく良い。その後のハロウィンパーティーと葬儀の一連のシークエンスも衝撃的な素晴らしさ。シャンタルも良い。彼女が居なかったらこの物語は成り立っていないだろう。