だいすけ

VIVANTのだいすけのレビュー・感想・評価

VIVANT(2023年製作のドラマ)
4.5
久々に骨太な日本ドラマを見た気がする。『半沢直樹』以来の興奮。

正直、1〜2話あたりは期待しすぎたと感じていた。この時点ではストーリー自体面白いと思えなかったし、なにより予算がかかっている割にはチープな印象だったからだ。それは物語のスケールに「技術」が追いついていないためだろう。こういった筋立ての映像を(特にドラマにおいて)撮り慣れてないせいか、構図、撮影技術、スタントなどが洗練されていない。しかし新たな試みに踏み出した点で、なんら責に帰す必要はないというのが所感である。

この点を補ってあまりあるのが、主演級の役者の演技(特に役所広司は素晴らしい)、そして見ごたえのある脚本だ。どんでん返しが大好物な自分には刺さりまくり。必ずしも伏線の扱いが綺麗とは言い難いものの、細かいことを考えず純粋に観れば楽しめるものだ。その内容も、刑事もの、クライム、アクションあり、恋愛あり、ビジネス要素あり、社会派の側面もありと、これでもかとふんだんに盛り込まれている。これはまるで複合エンターテイメント施設のような面白さだである。

「VIVANT」。フランス語で「生きている」という意味らしい。どういう思いでこのタイトルに決したかは分からないが、作中たびたびある「実は生きている」というシーン。また確かな生の素晴らしさ、生命の尊さ、を説く言葉にも感じる。そしてまた、人間は大義があって本当の意味で「生きている」と言えるということだろうか。人として大切なことはなにか、ノゴーン・ベキは綺麗事ではなくその生命をかけて訴えたし、日本国のために命をかける乃木もまた「生きている」のだ。「大義親を滅す」である。ただ、そのまま受け取るのではなく、人は実存としての生命があって、その上で自分なりの「大義」を見つけるのだと、そう捉えたい。
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