だいすけ

MIU404のだいすけのレビュー・感想・評価

MIU404(2020年製作のドラマ)
4.5
幅広い社会問題を取り扱いつつも、エンタメとして昇華していて見応え抜群。現代日本の病巣について考えさせられる。おどろおどろしい闇に触れる一方で、犯罪者の動機にも眼差しが向けられている。

罪を憎んで人を憎まずというが、ここで問われるのはまさに罪と赦しのように思える。誰しも道を踏み外す可能性はあり、環境や一つひとつの選択によって人生は右にも左にも振れる。そこでやはり大事なのは周囲のサポートであり、弱者が指の間からすり抜けて落ちてしまわないようにする社会のしくみだと思う。

志摩と伊吹のバディがいい感じ。論理的に結論に近づく志摩と、野生の勘と身体能力で最後にきめる伊吹。互いにないものを補い合う、まさに理想のバディ。他のメンバーも良いキャラしてる。やっぱり麻生久美子はいいなあ。

しかし何より菅田将暉の怪演には恐れ入った。ひょうひょうとした若者と思いきや、冷静沈着で頭が切れるサイコパス。本当に言っていることはクズそのものなんだけど、一切描かれていない過去を想像してしまう。まさに久住はNot Found、存在しない者なのかもしれない。つまり、社会から見て見ぬふりをされ、事実上存在を抹消されたようなもの。本作では、そのような存在なき存在が多く取り上げられている。だから久住も単にクズで片付けられず、どうしても背後に暗い過去を見出そうとしてしまう。

だが、久住はこれも拒否する。「俺はお前たちの物語にはならない」と。人は都合の良いもので、普段は気にも留めない存在であっても、社会的に取り上げられるとあることないこと想像し、勝手に同情する。しかし社会的弱者が求めるのは同情から生まれる偏った正義感ではなく、実際の支援だろう。いや、社会的弱者という表現自体、当人からすれば大きなお世話なのかもしれない。

コロナ禍で鬱屈とした閉塞感が日本を覆った。このようなご時世では、希望を見出しにくいものだ。不思議とこれまで潜伏していた社会問題も連鎖的に明るみに出て、絶望を深めていく。

それでも、人は、日本は再起できる。支えあいながら、何もないゼロの状態からやり直せる。そうやって元気づけられる作品。
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