だいすけ

アンナチュラルのだいすけのレビュー・感想・評価

アンナチュラル(2018年製作のドラマ)
4.0
なんだかやるせない気持ちになるドラマ。unnatural death、つまり不自然死の遺体を解剖して事件の真相を突き止めていくのだが、行きつく先はこの世の不条理。ここに米津玄師の「lemon」がオーバーラップして行き場のない感情にとどめを刺す。毎回、余韻が残る。

職業に似つかわしくないコミカルな雰囲気で、たまに不謹慎に感じる折もあるが、あれくらいのテンションでなければ重くて観ていられないかもしれない。そんで井浦新はやっぱり雰囲気がカッコいいな。

法医学者という職業は初めて耳にした。現実に、日本の法医学者は150名ほどだという。先進国の中でも最低水準らしい。なぜ少ないか。作中で六郎の父が説いていたように、今現在において生きている人間の命が優先であり、医者を志す者も当然そちらに意義を感じることだろう。解剖は軽視されているのが実情だ。

しかし、ミコトが言っていたように、法医学は遺族が未来を生きるための仕事だとしたら、大変意義深い職業ではないか。遺族が真相も分からず、悲しみだけを抱えながら悶々と生きる。中には大切な人が亡くなった時点で時が止まり、自分自身過去に置き去りになってしまう人もいるはずだ。それはある意味、精神的な「死」を意味するのではないだろうか。遺族は、亡くなった人の分まで、前を向いて生きていかなければならないのにも関わらずだ。

このドラマは不自然死をテーマにしているけれど、現実に生きていれば不条理なことはいくらでもある。不条理は人間が生み出すものだ。しかし同時に、作中でも見受けられるように、不条理に心を痛める良心や、大切な人を思いやる気持ちもまた備わっている。その複雑さと対峙しながら、希望を持って前を向いて生きていこうと背中を押してくれる作品。
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