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ウルトラマンブレーザーのkirioのレビュー・感想・評価

ウルトラマンブレーザー(2023年製作のドラマ)
4.0
特撮ファンによる特撮ファンのための特撮ドラマを極めてきた田口清隆ウルトラマン。そろそろ万全な体制を整えたシリーズドラマへ。次のステップへのきっかけになるか

「平成ガメラ」や「パトレイバー」を思わせる、純粋培養の特撮オタク路線と、ウルトラマンを含めた個性豊かなキャラ派のドラマ、そして緻密な特撮など
近年のニュージェネシリーズの主軸でありつつ、強烈な印象を残す田口清隆ウルトラマン
人間とウルトラマンのバディ路線もその名物の一つだ

本作の下敷きともいける「Z」では、その暴走ぶりとシンプルなストーリー構成で、人気を博した印象がある
今回のブレーザーでは、その良さを生かしつつ、近年の作品にないほど徹底した世界観設定と人物ドラマが用意されていたように思う。新ウルトラマンの斬新なキャラクターや販売促進グッズデザインに限らず、それらを取り巻く日常のアイテム、チームメンバーの個々のパワーバランスや家庭などが積極的に描かれた。
また近年、悪目立ち気味だった、製作であるオモチャメーカーとのパワーバランスも、例年よりかなり抑えられていたよう

SF性の高いドラマと組織の連携感、地球怪獣の扱いなど、不思議と「ウルトラマンガイア」を彷彿とさせる部分がある。というのも、2作前から「トリガー」「デッカー」と平成三部作のリブートを続けてきた流れを汲む部分はあるのだろう

一方、平成ウルトラマンと大きく違うのはウルトラマンの異質感だろう
「Z」のように人間の主人公とウルトラマンのコミュニケーションのギャップをユーモアにしつつ、基本的にウルトラマンは未知の存在として描かれる
またドラマ初期はSF性高いシリアスな世界観で、地球科学が通用しない最後の手段に、荒唐無稽な巨人が解決していく様が強調された。ある意味で原点回帰だが、ありそうでなかったアプローチではある(シンウルトラマンもそこまでではなかった)


見終わった印象としては、非常に純度の高い特撮作品に概ね満足しつつも、その徹底ぶりに対して、逆にシリーズ構成の力不足を少し感じてしまうところもある

往年のウルトラシリーズの良さの一つに、1話完結のオムニバススタイルが上げられる。毎週登場する怪獣に合わせて、ジャンルやスポットの当たるキャラクターなど、その回のスタッフの匙加減に大きく左右ところがある。
対して、長年の成功を収める「平成仮面ライダー」では、一貫したストーリー展開を見据えて、敵対組織の暗躍や伏線など、シリーズを通してのドラマ感が強調される(近年は危ういが)
その点ブレーザーとしても、個々の隊員や主人公の家庭の話を添えつつ、「V99」とウルトラマンの出現という大きな謎が伏線となる方向ではあったが、終盤では一部の謎の回収と問題解決にかなり急足だった印象だ

この「ブレーザー」の完成度もあり、 1話完結スタイルでステップアップし続けてきたニュージェネーションウルトラマンとしては、そろそろシリーズを見据えた体制を強化してもいいかもしれない
スピンオフ?っぽい劇場版もありだが、このままシーズン2もありだぞ、ブレーザー!
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