Yuto

モナーク:レガシー・オブ・モンスターズのYutoのレビュー・感想・評価

2.1
Apple TV+ オリジナル作品

東宝の「ゴジラ」を基にしたハリウッドのフランチャイズ『モンスター・バース』が展開する初のTVドラマシリーズ


主演に日系の女優を起用したり、日本語による会話パートが多数含まれていたり(ただし英文の独特なニュアンスをそのまま直訳したような不自然な台詞もある)、よくある「TOKYO」ではない「東京」を描いていたりと(まぁ街中に堂々とミサイルを配備していたのは安定の「TOKYO」だったけど)、制作陣の「ゴジラの母国」に対する意識は強く感じるし、それを形にしてくれたことには敬意を表します。

しかし残念ながら、全て観終わった後で言わせてもらうと、それ以外のことに敬意を表する気分にはなれません。

全10話。1話平均45分として、総再生時間は約450分。つまり約7時間半。このうち盛り上がる時間、つまり怪獣が出てくるシークエンスはせいぜい15分も無いでしょうか。計ってはいないけど、とにかく短いことは確かです。

単純に派手な怪獣プロレスを期待していたというわけではないけど、いつ果てるとも知れない退屈な人間ドラマを7時間以上も延々と観続けることを期待した覚えもないです。

モンバス1作目の1年後(2015年)を舞台に主人公が死んだ父親の謎を追ううちに腹違いの弟を巻き込んでモナークに首を突っ込む現在編と、1950年代から始まるモナークの創設に関する過去編の2パートを往復しながら物語は進みますが、はっきり言って私はこの構成が嫌いです。

見せ場らしい見せ場がほとんど無いことに加え、視聴者が注意を向けるべき対象と世界観が急にチェンジしてしまうが故に、キャラクターに対する感情移入もままならず、観るだけで疲労が蓄積し、結果ドラマパート全体として気持ちが離れていきます。
ペースの調整も情報の整理も自分でしやすい小説ならこういう構成もありかも知れませんが、必ずしも映像作品との相性がいいとは思えません。

それでもドラマが面白ければさほど問題にはならないでしょうが、本作の人間ドラマはまぁ退屈です。
テーマが不鮮明だし、ストーリーは起伏に乏しいし、カート・ラッセル以外キャラクターは全員微妙だし、これが何を題材にしたドラマなのか分からなくてなる時がしょっちゅうあります。あまりに冗長過ぎて倍速視聴でもしたくなるくらいです(Apple TV+にそんな機能あったっけ)。

そもそも作品として、エンタメとして、何を描きたいのか、何を魅せたいのか、何を目指しているのか。そういった制作陣のビジョンが見えてきません。最終話のラストはいかにも続編ありげな終わり方だったけど、本作はあくまで序章で、今後の展開のための踏み台でしかなかったのなら、大した戦略ですよ(続編があるのかどうかは分かりませんがね)。

果たしてモンバスは何をやりたいのでしょう。人間ドラマ皆無の脳筋怪獣プロレスをやりたいのでしょうか。それともそれを補足するためのつまらない人間ドラマをやりたいのでしょうか。私には分かりませんが、少なくとも本作を観て得るものは苦痛以外に何一つ無かったし、元よりあまり好きでなかったモンバスというフランチャイズに対する疑心は一層深まるばかりです。


Apple製品を持ってない方は本作を視聴できませんが、持っているけどApple TV+に加入しておらず、本作のことが気になっているという方は、サブスクリプションを購入したとしても本作の視聴はオススメしません。時間の無駄です。予告編だけで十分です。
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