Finn

エンジェルス・イン・アメリカのFinnのレビュー・感想・評価

4.2
AIDSに揺れる80年代アメリカを舞台に、愛とは?正義とは?信じるとは?を問いかける現代にも通じる作品。
エマ・トンプソン、メリル・ストリープ、そしてアル・パチーノがすごい!

元は戯曲として作られ、その後ブロードウェイで上演されトニー賞を受賞しているらしく、このドラマ版も壮大な舞台劇を観ているような気分になった。キャストが何役も兼ねているのも、元々演劇作品である名残かな?

AIDSという当時は不治の病だった病気も大きな役割を果たしているけど、それよりも同性愛者たちの苦悩や葛藤を通して、当時のアメリカ社会の問題とか宗教とか愛や正義を訴えていると感じた。

ゲイが何人も出てくるけど、それぞれ立場も考え方も違う。今よりもっと同性愛者への風当たりが強くて、AIDSは同性愛者がなる病気と思われていた時代。
登場するキャラクターはほぼ架空でも、当時(もしかしたら今でも)こういう人たちが沢山いたんだろうなと思うほどリアルに描かれてると思う。

一般的にはひどい!と思われるかもしれないけど、恋人がAIDSになって段々弱っていくのを見て、しかも自分も感染しているかもしれない状況で、パニックになって逃げてしまうルイスの気持ちは正直1番理解できた。自分だったら同じことをしてしまうかも。
捨てられたジョーは可哀想だけど、プライアーとルイスが仲直りできて良かった。

プライアーのもとに天使がくるシーンは、コメディとして観るべきなのかどうなのかちょっと困惑した…天使姿のエマ・トンプソンが神々しくて美しい!

完全にフィクションだと思って観てたけど、ロイ・コーンは実在の人物で、彼のせいで死刑になったエセル・ローゼンバーグの件も実際の出来事だったことにビックリ!
自分も同性愛者でありながら同性愛者を弾圧してきた挙句、AIDSになったけど肝臓癌と言い張って死んだという…闇が深い。アル・パチーノのお芝居が強烈すぎて圧巻。さすが。

奇妙な縁でプライアーと知り合ったジョーの母親(モルモン教徒で同性愛反対だった)が、その後も親交を深めて、ラストでプライアーたちと集まってお喋りしている姿にちょっと感動したし、希望が見出せた気がした。

アメリカ史とか宗教に疎くて、観終わってからネットで調べて腑に落ちた部分も沢山あったな。
重いテーマだけど、苦しいというよりは深く考えさせられる素晴らしい作品でした!
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