テリーマザーファッカー虎

ウルトラマンギンガSのテリーマザーファッカー虎のレビュー・感想・評価

ウルトラマンギンガS(2014年製作のドラマ)
3.5
前作は久々のウルトラシリーズではあったものの低予算ゆえ話も舞台も小規模で決して誉められる作品では無かったのですが、直接の続編である本作は市街地を舞台にして防衛隊なども登場、キャラクターも大幅に増え、より物語を奥深い物にしたと思います。

前作で主人公としては成長しきってまったヒカルに対して、ウルトラ戦士としてはまだ未熟なショウを登場させたことにより新しいキャラクター成長を描くことに成功したと思いました。

本作からキャスト含めスタッフ陣も前作から一新させ、メイン監督には『ウルトラ銀河伝説』の坂本浩一、脚本には小林雄次と中野貴雄などが参加するという、現在のウルトラマンシリーズの製作体制が完全に出来上がった作品と感じます。

全16話中、前期と後期に分かれる本作は前半は正直メインストーリーを進めることに尽力しているので、ちょっと単調に感じてしまう部分があったが、9話以降の後半戦は今までの流れが嘘のように怒濤の展開になっていて非常に面白かったです。
自らの手で制御できない力を持ってしまった人類をシリアスな描写で描いていくクライマックスは人類の希望の象徴となるウルトラマンの存在もあり見ごたえある物語となっていました。

前半普通、後半最高といった総評ではあるものの、本作について何よりも言及したいのは後に『ウルトラマンX』や『ウルトラマンZ』などでもメイン監督を務めることになる田口清隆監督が初めてウルトラマンシリーズに監督として参加したということだろう。
16話中5話も担当しているなか、後半に担当した2話は本作の中でも屈指の異色回であり神回であるという興味深い結果となった。

第11話『ガンQの涙』はなんと防衛隊やウルトラマン達が完全なる脇役と化している異色中の異色回。
田口監督とは『MM9』で一緒になった中村靖日がガンQに変身させられてしまった冴えないサラリーマンを演じ、孤独な少年と心を通わせほんの少しだけ成長していく様を絶妙なカメラワークや意味深なメタファー、シュールなギャグで見せていくという作品。
本筋とは全く関係のない話で神回が出るのはなんともウルトラマンらしいのだがウルトラQを彷彿とさせる怪獣描写やしっかりと魅せる巨大戦も素晴らしい。
中野貴雄の脚本も非常によく出来ていてクライマックスは号泣。そしてラストシーンの切れ味は思わず拍手してしまうレベル。正直ウルトラマンに興味のない人にもこの回は是非見て欲しい。

そして続く第12話『君に会うために』は夢を叶えアイドルとなった前作のヒロイン千草が再登場し、なんとメトロン星人が彼女のガチオタとして登場するというコントのようなシュールギャグ回。
こういった日常と怪獣のいる非日常の違和感をシュールに描き出していく田口監督のスタイルは『ウルトラゾーン』などで獲得したスタイルに感じるが、本作ではそういったギャグ描写以上に終盤の戦闘シーンの演出が素晴らしかった。
田口監督お得意の長回しを使用しながからもさながら横スクロールアクションゲームのような画面作りで魅せる戦闘シーンは非常にスタイリッシュかつフレッシュなシーンになっていてこれまたウルトラシリーズに残る屈指の名シーンに思われる。
もちろんギャグ描写も本作の中では一番尖っていて『怪傑ズバット』のパロディは思わず吹き出してしまった。

上記の2話だけでも一見の価値のある作品であることには間違いないと思われる。