おにおに

官僚たちの夏のおにおにのレビュー・感想・評価

官僚たちの夏(2009年製作のドラマ)
5.0
TBS日曜劇場のドラマ。ドラマはNHKが良質ですが、TBS日曜劇場枠はたまに激アツの傑作ドラマがくるので好きです。代表的なのは「半沢直樹」でしょう!

この「官僚たちの夏」もそういう系譜に連なる激アツドラマでした。
原作は城山三郎。好きな作家のひとりだ。

昭和30年からこの話は始まる。実力派俳優が目白押しのキャスティング。
佐藤浩市、堺雅人、佐野史郎、西村雅彦、杉本哲太、高橋克典、蟹江敬三・・北大路欣也とかね。

第1回は、「国民車構想」にかける話。
「モータリゼーション」。まだ道路舗装率が低く、道を走ってるのはアメリカ車ばかり。車のお値段は国家公務員の年収の5倍。
そういう時代に、「一家に一台」車を持てるような社会を作ろうと。
通産省の主導で、日本の自動車産業を育ててね。
自動車産業は裾野が広いので、これを育てれば部品会社とかでたくさんの雇用が生まれます。人の動きやモノの流通も流れがよくなる。 経済の発展に欠かせない!これができなきゃ日本の未来はない!!みたいな

それをやろうと。ゼロ戦とか大和を作った日本人だ。絶対できる!ゆくゆくはアメリカに殴りこみをかけてやる!!ってね。もう信念。これが激アツなわけですよ。

当時自動車といえばアメリカ。戦争でボッコボコにやられたアメリカです。
国産車プロトタイプ第一号の完成車の走行試験。
アメリカの自動車バイヤーたちを招いて。
目標の「時速100km/h」を達成し、大喜びの日本人技術者たち!

が、アメリカの自動車バイヤーたちは、通訳役の官僚にこう告げてホテルへ帰ります。

―君たちの作ったものはおもちゃとしてはおもしろいが、我々はあれを車とは認めない。あの程度の技術しかない国が自動車を作ろうと発想すること自体が我々には理解できない。神風特攻隊のようなサムライ精神には敬服するが、日本人は、おもちゃや安物ブラウスを作ってるほうがお似合いだ。

「それでいいのか・・このままアメリカに負けっぱなしで悔しくないのか・・」
「技術じゃ・・勝負にならないよ。宇宙開発にまで取り組んで、有人飛行や月面着陸まで視野に入れてる国だぞ」
「何も宇宙で勝負するわけじゃないでしょう?」
「デトロイトの自動車工場は、日本の町工場とは比べ物にならないスケールだ。
自動車はアメリカに任せて、日本は、別の産業に力を注ぐべきだよ」
「アメリカだって最初はゼロから始めたんだろ!」
「・・・国産自動車が育たない限り、日本の産業の発展ない。。
このままじゃずっと、アメリカの下請けのままじゃないか!」
「アメリカにできたことが・・日本にできないはずはない」

泣いた。


第2話は「テレビ」の話。
「わかってください!」「通産省は味方なんです!!」
大沢無線の社長が振り返る。額に「前進」の二文字。

第3話。日米繊維摩擦の話。
繊維摩擦でアメリカからの圧力を受け、繊維の対米輸出自主規制を通産省にのませるべく、海外に飛ばされ煮え湯を飲まされていた国際通商派の実力者っぽい2人(船越英一郎と高橋克典)が霞ヶ関に帰ってきて、国内産業保護派には逆風が吹き荒れる。

「これだけの企業が倒産するっていうのか」
「半分の企業が救われるんなら上出来じゃないですか・・」
「半分は潰れても平気だっていうのか!」


「通産省の横暴を許すな!」「我々に死ねというのか」というプラカードを掲げて必死に抗議する繊維産業関係者たち。保護派の通産官僚の胸倉を掴み「おれらを殺す気かー!」

国際協調派の玉木も、一人グラスを壁に叩きつけて・・
風越(佐藤浩市)。「私は大臣に雇われてんじゃない国民に雇われてんだ!」


エンディングはコブクロ。戦後の経済成長のモノクロ映像をバックにエンドロールが流れる。

すばらしくよかった。
おかしな意味ではなく日本人であることを誇りに思える、そんな感じの激アツドラマです。
おにおに

おにおに