真一

ウォーキング・デッド4の真一のレビュー・感想・評価

ウォーキング・デッド4(2013年製作のドラマ)
3.7
 法律も国家もなく、ゾンビが徘徊する世紀末世界。廃墟と化した街をさまようあなたと、あなたの恋人や家族の命を守るのは、銃だ。そのあなたの前方に、同じく銃で武装した二人組の男がいる。向こうは、こちらに気づいていない。気づいた時、連中が何をしてくるか、予想は付かない。あなたの横には怯える家族がいる。あなたなら、男たちを銃撃するか。しないかー。

 「殺人」「強奪」「凌辱」などは、いかなる国家においても許されない自然法上の概念だと、私たちは信じてきた。本作品は、この疑うべくもないはずの基本的価値観を取り上げて「絶対的な真理と言い切れるか」と問い詰めてくる。

 本作品は、米国の銃社会が生み出した問題作でもある。「見ず知らずの相手と握手するのも、撃ち殺すのも、自己責任」という考え方を色濃く反映していると感じた。かつて米国の裁判で、日本人留学生を不審者とみて射殺した米国人が、遺族の前で「自らの命は自分で守る自由がある。同じことが起きれば、また撃つ」と悪びれずに語ったことを思い出した。米国人は銃で自由と独立を勝ち取り、銃で先住民を虐殺して大西部を支配した国民なんだと、改めて実感させてくれるのが、この作品だ。
 
 このテーマは、日本政府が新たに打ち出した「敵基地攻撃能力」保有問題にも当てはまる。「中国や北朝鮮は何を考えているか分からない。ミサイルを撃たれる前に、そのミサイル基地を破壊する必要がある」という理屈だけど、戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条の精神を踏みにじることにならないのかという声も後をたたない。

 人類は結局、殺しあわなければいけない運命にあるのか。仲良く共存する手立てはないのか。ウォーキングデッドは、こうした本質的な議論をするきっかけにもなり得る作品だと思います。
真一

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