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そして誰もいなくなったのNMのレビュー・感想・評価

そして誰もいなくなった(2015年製作のドラマ)
3.0
明らかに何かが起きる雰囲気は冒頭から惜しまない。不協和音や、雨風の音、短調のヴァイオリン曲などが流れ、画面もレトロで全体的に暗め。
だが、それほど怖さはなく、サスペンスが苦手な人も問題なく観られると思う。若干ホラー的要素も。
逆に好きな人には物足りないかも知れない。
むしろ古いファッションや家具のせいもあって、絵画的な映像美がある。

推理よりも、人間の心理にテーマが置かれているようにみえる。
キャラクターたちの個性が濃く、はじめは礼儀正しくしていた客たちだが、閉ざされた空間で非常事態となり、次第に隠れた一面をむき出しにしていく。
そしてそれぞれの暗い過去と向き合うことに。

果たして彼らは本当は何者なのか。そして犯人は。

冒頭のシーン。
「周りの影響によりを受け過ぎるのは人間としての弱さよ。甘えでありむなしいこと。女性も強くあるべきだわ。勇敢かつ高潔にね。それが英国女性よ。香水もつけなさい。マナーよ」
何やら相当の心傷を追っているらしいメイドに、館の客である婦人が言うセリフ。いたわるでもなく、息つく間もなく働く彼女に山のような課題を突き付ける。
元教師のヒロインにも「三流の学校では三流の生徒が育つだけよ」と色々酷い。

こんな風に気取っていた彼らが、犯人探しのため疑い合い、罵り合い、感情をあらわにしていく。
追い詰められて、逆にどんちゃん騒ぎをしてみたり、非常時の恋愛的なものものまで生まれたり、話はあちこちへ。
最初はシロにしか見えない人々も、実はおぞましい過去を抱えている。クロっぽい人も逆に白く見えたり、また色を変えたり。

どんなに社会的信用の高い人だろうと、疑おうと思えばいくらでも疑えるし、みんながこうだと言い始めると、そちらの方に考えが流されてしまう。

展開が早い。第一回だけは設定紹介が主だが、次回その次回とどんどん進む。

しっかり観ていないと、誰が何をして、どんな場面を目撃していたか、などを把握できず面白くなくなるので、ながら見はできない。

このドラマは印象的な台詞が多い。英国的とも言えるかも知れない。
「誰かが喋ると思ってた。安全な場所に入ると人は罪悪感に襲われる」
「愛とはお金のかかる道楽だもの」
「権限を行使し結果を見ないのは無責任だと思っている(死刑執行に立ち会ってきた判事)」
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