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Veep/ヴィープ シーズン7のnntmkazuyotaroのレビュー・感想・評価

Veep/ヴィープ シーズン7(2019年製作のドラマ)
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生き辛さの代弁者としてセリーナは女版ラリー・デイヴィッドと言うに相応しいが、veepという立場が社会における女性の立場と重なるところがあり、最悪だが決して理解し難い人物ではないことがこのシーズンでは描かれていたと思う。(最終話でセリーナの口から語られるveepが正にそれ。邦題がなんでこうなったのか意味不明ですがep7の原題は『Veep』です。ちなみに理解し難いのはただのアホのジョナであって、彼の様な人をバカにしてほっておくとどうなるか「神輿に担ぐ奴らが現れヘイトを扇動し出す」まぁ、ほぼトランプってのも的確に描写されてましたね。)

「女性は幸せじゃないといけない」と責められている様に感じたり、女性として失格になると人としても真っ当に生きてはいけないと言われているような気がすることがある。だからむしろ他者を顧みない傍若無人なセリーナの言動に少しホッとする瞬間があって、本人の意に関わらず不幸でも最低や最悪でもいいんだと感じた。それが表面的にはとっても孤独なことだとしても。(ラストのベンもそれなので性別に関わる話ではないってのは救い。)
だから最後のゲイリーの姿には涙がでた。セリーナのお気に入りのリップをずっと持っていたのはいつか返す為じゃない、いつか彼女が“それ”を必要とした時にまた塗ってあげる為、その“いつか”が来ることはなかったけど“それ”はいつも側にあったのだ。お互いに片時も忘れたことはなかっただろう存在、一人でもいれば十分でしょ。絆は愛や恋や友情だけに与えられるものじゃない。

このドラマは男性からも女性からも嫌われ舐められる『女性』という存在をネガティブに捉える社会に向けた猫パンチ(トムとダンがちゃんと裁かれるところでもわかる。)。
いつまでも若くキレイでいろ、結婚しろ、子どもを産んで家族を大切にしろ、それが女性の役割であり社会の為になると教えられてきたと思う。そうやって育ってきたって考えるだけでわたしは最悪な気分になる。このドラマはそんなわたしのルサンチマンでできた最悪を吹き飛ばし、よりゲスい現実を見せてくれる。でもね、どっちもくだらない地獄だと思うとほんと笑えるし案外スッキリするもんなんだよね、これが。良くも悪くも「そんなことどうでもいいんだよ」ってセリーナやファーロングなら言うだろう。
目まぐるしく流れる様なカメラワークやカット割、ハッとするショットには最後まで脱帽だった。ハイコンテクストなユーモアをパワフルに描いた超超超傑作!落ち込んだときに見返すわ。
民主主義は建前、政治は権力ゲームに成り下り、利権は永遠に金持ちのもの、だとしてもhumanityとcommunityの持つパワーを信じたい。良心(リチャード)の勝利と私利私欲の因果応報と下品な下ネタをラストまで描ききった制作陣には拍手とvoteを!(ジュリア・ルイス=ドレイファスはマジで最高過ぎた👏🗽)


時に腹黒く『女性』を言い訳にも武器にもし「ガラスの天井」を連呼し続ける失態と偶然だらけのセリーナ・マイヤーという生き方、周囲の人々にとっては余りにも酷い人間だけど(特に血縁者、キャサリンの選択は正解だろう)、他者との関係を優先するあまり誰しもが忘れがちになる「自分の為に自分の人生を生きる」ということを恐れない姿勢には感動する。(無論、政治家にはなって欲しくないけどね)
嫌われ者、変わり者だと呼ばれても構わないそう思うのはエゴじゃない。社会に男性に1ミリも利用されるな!あなたは賢い女だと、わたしの頭の中でキーキー騒ぎ“わたし”を振り回す小さなセリーナ頑張れ。
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