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ジェムストーン家の敬虔なる私生活 シーズン3のnntmkazuyotaroのレビュー・感想・評価

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これまでのおバカはちゃんとやりつつ、2つの家族を対比しながら、善と悪、家族の存在を問う。ドラマとしての厚みが増したシーズンだった。
このシーズン3成功の鍵は、間違いなく従兄弟家族の登場である。その中でも物語の中心となる“もう1人の父”ピーターが群を抜いて良い。演じているスティーヴ・ザーンの怪演に尽きると言っても過言ではない。スマッシュヒットした『ホワイトロータス』の後にこれに出演するのマジで英断やと思う。
そして、一見すると残酷で悲劇のような話しをS1S2同様にコメディとして脚本に落とし込むダニー・マクブライドの才能と努力。個人的にはBJとキーフとギデオンの活躍がとにかく嬉しかったし、コメディーリリーフとしてのベイビー・ビリーは言わずもがな完璧だった。
そして何より、この全てをまとめあげるジョディ・ヒル&デヴィッド・ゴードン・グリーンの監督としての手腕。(ジョディ・ヒルはほんとすさまじい)
役者、脚本、監督、全てが揃った奇跡みたいな出来栄え。HBOマネーで破壊の限りを尽くしたシリーズ最高峰。

ジェムストーン家のお家騒動に加えて今シーズンでは、新自由主義が生んだインセルやネトウヨも含む社会に恨みを持つピーターの様な人が救われるべきか?というテーマに重点が置かれ物語が進む。
貧しい人や持たざる人が、社会に対して恨みを持っても仕方がない気がする。今の社会構造が原因であり、彼らの本質ではないとつくづく思う。だからエピ7の“All The Gold in California”を彼ら(代表して歌っているのはカントリーシンガーのスタージル・シンプソン。彼は保守派が多いカントリー界で、トランプを批判し銃規制に賛成している。)が合唱するシーンは胸に迫るものがある。彼らの言動を肯定することはできないが、もう少し何故そうなったのかに目を向けるべきなのだろう。誰だって希望が欲しい、それ自体は悪いことではない。

試練に直面した時、わたしたちは何を信じ誰を助け共に生きるのか?それは、宗教の教義の様であり人生が抱える永遠の問いでもある。たぶんその線引きをするのは神じゃない。だから互いの手を取り祈るんだよね。
ただ愚行が裁かれるのではなく、善良な魂に救いの手が差し伸べられるべきだってのはダニー・マクブライドらしい。ジェシー達が善人かと言われれば必ずしもそうじゃないかもしれない、が少なくとも偽善者ではないことは確か。そして富では救えないことがあるし時に問題の種となるとしながら、最後に莫大な富がまたしてもジェムストーン家に転がり込む展開も皮肉が効いている。
Y2Kの時わたしはカウンターカルチャーに憧れる変な中学生だったのでめちゃ冷めた感じで過ごしてたなぁ。イーライは、ほんとおつかれさま~。ついに三兄弟の番が来た。シーズン4も楽しみだね。
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