タキ

獄門島のタキのレビュー・感想・評価

獄門島(2016年製作のドラマ)
4.5
金田一といえば石坂浩二か古谷一行の世代でなにしろ当時は子どもだったから怪盗二十面相シリーズやルパンシリーズと同様の謎解きミステリーとして鑑賞していた。その中でもやはり金田一シリーズにおける土地や血縁の因縁と絡み合う一種の禍々しさは他の追随を許さずこわごわ見てるせいで謎がなんだったのかさえ思い出せないことも多く、何度も映像化してる割にはこの「獄門島」も新鮮な気持ちで見たのだった。
たしかに映像化が始まった当時から戦後日本の閉塞した血の濃そうな瀬戸内のどこかの村という舞台装置の中で巻き起こる殺人事件ではあったが、金田一耕助がPTSDをもつ復員兵であったという描写は初めてではないかと思う。
余所者だからという理由で巡査に疑われ拘置所にいれられた金田一は早速暗くて狭い場所でパニックに陥り幻覚を見るのだが、「人が人を殺す訳を知りたい」というのが探偵をやっている理由だと焦点の定まらない目で虚空に語りかける。
こわい。
マジでこわい。
謎解きのシーンも狂気だった。了然和尚の過ちを説くのみならず「無駄無駄無駄無駄無意味!」との追い討ち。「思いもおよばぬことなどない!そんなものなどないんだ!」からの慟哭。一方の和尚はショックで死亡。その場に漂う虚無。

戦士した鬼頭家の跡取り息子2人。女であり精神障害を患っているという理由で殺された三姉妹。理不尽な犬死ばかりのがらんどうの物語に意味を見出そうともがき続ける鬼頭早苗と金田一耕助。
早苗は結局島をでることはなく金田一も「こんにちを生きる訳」のためにおのが運命を受け入れて生きていくことになる。理不尽に対抗する唯一の手段が哀れではあるが実質早苗は鬼頭家の当主となるのであり金田一も望まれて次の事件現場に行くことになり同時にしたたかさも感じるエンディングとなっていた。
ストーリーテラーとしての役割以上に生きる意味を模索し続ける金田一耕助というニューヒーローの誕生と言っていいのではないだろうか。
続編をぜひ作ってほしいのだが悪魔が来たりて笛を吹くは吉岡秀隆版になってしまったようだ。今後の長谷川版金田一に期待したい。
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