だいすけ

チェルノブイリのだいすけのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.5
これは本当に現実に起こったことなのだろうか、と疑いたくなるほど衝撃的な内容。ロシア(旧ソ連)が、今も昔も変わらず腐りきった国だと分かる。

あくまでも真実を追求するスタンスから、過剰な演出は避け、原発事故の一部始終を丹念に描く。それでも、見せ方や展開が巧みで、まるでSFか、サスペンスか、はたまたホラーを観ているような感覚に陥る。これが事実とは俄かに信じがたい。作中において、終始一貫して不穏であり、静かな恐怖に包まれる。

この恐怖は、科学と政治という異なる二つの対象に注がれる。まず、核の恐怖である。核が恐ろしいものであることは重々承知していたつもりだったが、本作はそれを科学者による詳細な説明と身も凍るような映像で訴えかけてくる。被曝した人間の末路は目も当てることができない。

そしてもう一つの恐怖が、ロシア(旧ソ連)という大国が抱える闇である。国家、あるいは上層部の人間の権威を守るために、嘘で塗り固められた欺瞞に満ちた国。嘘が綻びそうになれば、その原因となる人間は社会から葬られる。現代においてもそうだ。ロシア国家は情報統制によって自国に都合の良い「真実」を作り上げ、国民に信じ込ませる。

しかし国民は本当に気づいていないのだろうか。本作でも、レガノフを初め真実を追求した者たちはいたし、上層部の人間に意見した部下もいた。それほど勇敢な人間は多くない。大多数は、社会的な地位、さらには自身や家族の命を人質に取られた状態で、気づかないふりをしているのではないか。

まさに今、世界はロシアによって上に挙げた科学と政治の恐怖に晒されている。自国を脅かす敵国に徹底抗戦の構えを見せることはすごいことだ。しかしそれ以上に、内部から声を上げることはもっと勇気がいるはずだ。レガノフのような勇敢な人間は、腐りきった国に差す最後の希望の光だ。
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