名作というコトバで片付けていいのか。
でも、名作だと思う。
時間をあけて、二回見た。
小さな作品ですが。
製作者の真摯な思いに、心を持っていかれる。
実話がもとになっていると思うと、より凄みと重みがある。
タイトルに込められた思いも強い。
レイプ事件の話、です。
レイプされるのは体だけじゃないし、その瞬間だけじゃない。ずっとココロと自分の過去も未来も時間ごとレイプされ続けられるような感覚。
そこに追い討ちをかけるかのように、何度も事情聴取があり疲弊しきった、あげくは、信じてもらえない、という爆弾を抱えさせられたら…絶望しかない。
被害者の女の子が、よく耐えて強いなと見えるけど、実態は感情と記憶を凍結して、なんとか保っている、何かを感じたら壊れてしまうから、できる限り何も感じないようにしてるんだろうと思うと、絶望の鍋の底を見たようで、胸が苦しくなる。
他の被害者も、なんてことはない、私は大丈夫と言わんばかりに自嘲気味に笑いながら話してる。でも、笑いながら涙がポロポロ流れてくる。
なぜ被害者側に、健気さを身に纏わさせるよなことになるのか。
胸がしめつけられる。
被害者側の気持ちを思うと、とにかく辛いし、理不尽な周囲に憤りとやるせなさを感じて震えるし、でも幸いにも実体験なき自分に何も理解できる資格すらない無力感で、頭を抱えてしまう。
それでも作品として見られるのは。
管轄の違う女性刑事が二人、協力して連続レイプ事件として捜査にあたるんやが。
もちろん役者がいいのもあるが、この二人に、わずかな希望を感じられるから。
その希望に見てるこっちが縋りたくなるから。
お願い、信じて、信じさせて、つきとめて、託せるのはあなたたちしか居ないの、頑張って、諦めないで、お願い、代わりに戦って、という気持ちになってしまう。
なんか必死になって見てしまった…。
でまた、彼女らの生活、彼女らなりの人生の悩み、警察という男社会での奮闘、も、丁寧に描かれていて、人間味を感じられる。
捜査から逮捕まで、一切の派手さはなくて、とにかく地味で地道でありながら、じわじわと真犯人に迫っていく。
いわゆる女性刑事のバディものドラマとしても、ソリッドにとても良くできているので、その妙味で、コトの辛さが程よく緩和される。
相手の立場に立って考える。
被害者が見た景色を一緒になって瞬きせずに見られるか。
でも事件を捜査する上では、感情的に肩入れし過ぎてもダメで。
真実だと信じたものを証明すること、信念を貫くことは、戦いで、地道に丁寧に積み上げ続けるしかなくて、諦めたらダメで…。
とかとか。
どう説明すれば良いかわからないし、何を感じ取るのが正解かもわからないのだけど。
とにかく静かな深みのある沼作品。
ラストが良かった。
報われるというか。
こんな話なのに、明るい景色が見られる。
塩を塗られたり、自傷だとさえ疑われた深い傷に、時空を超えてバンドエイドを送ってくれた人がいた。
あの時、欲しかったのはたった一枚のバンドエイドだったのに、誰も、それを差し出してくれなかった。
今も傷跡はクッキリあるけど、もう血は出てないから、今更のバンドエイド。でも、嬉しい。
そういう人がいるという事実が絶望の底の希望になる。
信じてくれて、ありがとう。
私が諦めた戦いを、戦い抜いてくれてありがとう。
何もかもどーにでもなれと思ってたけど、そういう人がいる世の中なら、もう少し生きてみようと思うよ。
そんな感覚でした。
違うかもやけど。
また改めて見直そうと思う。