しいたけ

日曜日は終わらないのしいたけのネタバレレビュー・内容・結末

日曜日は終わらない(1999年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

終始はちきれんばかりの閉塞感に圧倒され続けた。記憶の底に微かにある1999年は確かにこんな空気だった。今回はフィルム上映だったけど元のハイビジョンVTR版の生っぽい映像(たぶん)でも観てみたい。

メモ

・前作『水の中の八月』で効果的に用いられていた自転車は本作でも健在。地に足立てず、浮遊しながら自由を求めて無軌道にさまよい続けるイメージ……前作で掴んだ水橋研二と自転車が醸し出すこのイメージを核に前作より更に進んだものを提示したい、というのを感じる。

・『水の中の八月』で効果的に用いられた自転車や水のイメージは今作でも頻繁に登場する重要な要素になっていて、ある意味精神的な続編、前作と世界観を共有しているような作品に思える

・後半、青空の下自転車を走らせる水橋研二の後ろにでっかく飛び上がる飛行機の姿と轟音。林由美香の姿を見つけたカットでも同じことが繰り返される。その高揚感。

・水橋研二の着る真っ白なTシャツ、林由美香の着る赤い服。二人が土手に座るカットの左側に位置する紅白鉄塔でこのカラーが反復されていて、しかも紅のアンテナがぐるぐる回り続けている。決まりすぎ…。2005年の劇場公開時のポスターになってたのはこのシーンかな。

・「外」には出れない。町の外れの打ち捨てられたバス、屋上の屋根、町を見下ろす廃墟にかりそめの安らぎを求めても、行き場を見つけられないまま日々の生活空間に捕縛されるほかない。見上げる空の意味は父親のロケットにも繋がっている…。町の端の海外沿いに浮かぶブロックから入水自殺する主人公に胸を締め付けられる…。

・そして入水自殺の後に入る、夕焼けを背景にした父親の作るロケットの打ち上げ現場から自転車を必死に漕いで逃げるカット。同じ死を願いながら、天と地とそれぞれ真逆の方向に向かっていく父と子。次のシーンで散髪をきっかけにわずかに父と子の交流を描いてみせる流れにしびれる。

・飛躍の仕方が大胆。殺人のあと手を洗うシーンからいきなり長いトンネルを抜けて出所するシーンになる。一瞬も目を離さずちゃんと集中して見てても展開がわからなくなる時がある。こんなとがった作品が(ハイビジョンドラマという少し特殊な放送枠とはいえ)TVで放送されていたなんて…。

・ファーストカットで見上げる形でカメラにとらえられ透明で青い海に漂っていた赤いパンティは、ラストカットではカメラが見下ろす形で力なく埃立つ海底へと沈んでいく。最後まで最高。終


22/3/6 @国立映画アーカイブ

二回目。

 すごいカットが一杯。水橋研二とピンサロのおばさんが中華料理店で話すシーン、最初ガラガラの席を映した後、会話を映すのだけど、そのあとまた席にカメラが動くとお客さんが沢山入っている。シームレスに。伊藤歩との屋上シーン。伊藤歩のセリフが終わった後、カメラが水橋研二を映すといつの間にかみるみる画が暗くなって夕方から夜になっている。なめらかすぎて初見では気づかなかった。

 後半の林由美香との屋上シーン。ふと目覚めるとさっきまで花で一杯だったはずの自転車は元通りになっていて、林由美香も消えている。主人公が買った赤いパンツだけがかごに残っている…。まるで今日の出来事が全て妄想が幻想だったかのように。廃墟から帰るべき街を見下ろす主人公の目は虚だ。

「なんで死なないの? 人を殺したのに。死刑にならなかったから?」

https://video.fc2.com/content/200809172u0FX6vv
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