ねまる

リプリーのねまるのレビュー・感想・評価

リプリー(2024年製作のドラマ)
3.9
モノクロのイタリア。
それは色彩の情報が無い、足りないとは全く感じず、むしろ構図とロケーションの美しさを際立たせ、鮮明な美を感じる。映像だけでもうっとり。

マット・デイモン、ジュード・ロウの映画と同じ原作を題材にしていながら、作品の感じ方も、登場人物の見え方も全く違う。

アンドリュー・スコットはどんな作品に出ていても、目が離せなくなるほど魅力的なはずだけど、今作のリプリーは、マット・デイモンが演じたのとも、過去にアンスコが演じたモリアーティともまた違う大きな闇を感じる不気味な役。
だからか、ディッキー演じるジョニー・フリンが愚かで不憫で同情してしまう。(アウトフィットもそうなので、これがジョニー・フリンの魅力なのだろうから怖い)退場が早すぎるのが勿体無い!

ジョニー・フリンだけでなく、フレディ・マイルズを演じたエリオット・サムナーも妖艶だったし、ダコタ・ファニングでさえ聡明さと同時に余裕ある者の愚かさが感じられ、またイタリアの刑事さんたちの渋さも良かった。

アンドリュー・スコットはトムをヴィランとして見るのではなく、主人公として見て欲しいと言っていたけど、トムへの同情心はなく、むしろどこまで人間性を失うのか、猫と同じくらい我関せずな態度で見ていたとは思う。
ただ、完全犯罪というほど確率していなく、行き当たりばったりなので、ちょっとした演出では同じ気持ちでヒヤっとする。共犯というほどではないが、ヒヤリを共有できるくらいの距離。
一度人を殺した人間は、選択肢の中に、"殺す"が入るようになることが恐ろしいのだと思った。

果たして、彼は誰だったのであろうか?
また新たな名を獲得し、繰り返すのであろう。
ねまる

ねまる