lapin2004

ブラックライトニング<シーズン1>のlapin2004のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

白人警官による横暴な扱い、ギャングに支配された街、蔓延するドラッグ、襲撃される学校…アフリカ系アメリカ人の視点で描かれ否が応でも彼らを取り巻く状況について考えさせられる作品。ヴィランが黒人にも肌の色ゆえ特別視されてしまうアルビノという存在なのも物語に深みを与えている。

まあそれはそれとして、二人の娘を持ちもう少しで元妻と復縁できそうな校長先生、という設定が生み出すファミリードラマが面白い。次第に明らかになる過去、椅子の人システムなどアローバースの培ってきたノウハウ、「方程式」が踏襲されており、すんなり物語に入っていける。ただし一話ごとに異なるヴィランが登場することはなく、ヒーローものとしてバトルの爽快感・カタルシスはあまり無いかも知れない。以下、各キャラクターに対する所感↓

・ジェファーソン
外面は聖人君子「黒いキリスト」の異名をとり理想を説くガーフィールド高校の校長先生。しかしギャングとは協定のような形で高校を守り横暴な警官に対しての“処世術”を娘に指導するなど現実主義者の一面もある。一方ギャンビとの和解を求めるアニッサにブチ切れたりジェニファーに“治療”という選択肢を示したリンに対してブチ切れたりするなど頑固親父的な一面もある。更には能力を愛撫に使ってみたりドレスの下を透視するのに使ってみたりスケベそうな笑みを浮かべたり(?)とエロ親父的な一面もある。能力を使うと精神的に攻撃性が増すという設定もあるにはある。

・アニッサ
学業優秀で意識高い系でレズビアン。しかし止まらない理想は過激に暴走し警察のお世話になってしまう事もしばしば。その行動力で過去の事件の真相に迫り物語を転回させる役割を担う。父親目線で見ると、(正体がバレる以前から)ブラックライトニングの活動を全面的に肯定・支持しているのは嬉しいだろうなと思う。

・ジェニファー
クラブでマリファナを燻らせ学校で酒を飲む。ケンカを売られたら倍返し。今週末セックスしまーす!と両親に堂々宣言。キャラとしては不良娘っぽいが、いつも微分積分の宿題をサボらず取り組んでるあたりはアカデミックな母と姉のDNAや家庭環境を感じさせる。

・リン
ピアース一家というか全登場人物の中で一番まともな人、という印象。言ってる事に筋が通っており視聴者の代弁者的存在。しかしいきなりセクシードレスで元夫を誘惑しちゃうのは唐突な印象。基本的に「強い女」だがジェニファーの治療を巡りジェファーソンがブチ切れると、迫力に押されてかすんなり非を認めてしまう弱気な(?)一面もある。

・ギャンビ
本作における「椅子の人」。ヒーロー作品における「どうしてそんなハイテクスーツが作れるの?」という問いに「仕立て屋だから」というコロンブスの卵的な設定。これには感銘を受けた。ピーター・パーカーみたいな男子が普通にミシン使いこなすのはおかしいもんね。監視カメラのハッキングのみならずブラックライトニングの攻撃練習用にビデオゲームみたいなシミュレーターを作ってしまうほどのITスキルも有する。視聴者的には善良な人物であるが、自分で俺は悪人だと言うように射殺や住居侵入などの汚れ仕事も辞さない男。このドラマに出てくる白人は見事に悪人ばかり。


それぞれが何かしら二面性を持つというか行動原理・キャラ設定が定まってない感もあるが(特にジェファーソン)、サリム・アキル監督の語る「誰も完璧ではない」というテーマ性を体現しているとも言える。実際の家族ってこんなもんだよな、という感じ。最終話前の、リン含むピアース一家と、和解したギャンビが食卓を囲んで手を繋ぎ食前の祈りを捧げる場面が心に残る。
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