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阿修羅のごとくのjdのレビュー・感想・評価

阿修羅のごとく(1979年製作のドラマ)
5.0
不倫モノであるものの、本題はそこではないところに面白さがある。物語に距離感をもって不倫を見ていると、こうも滑稽かとも思うし、こうも悲しいとも思う。

とにかく4姉妹のキャラクターが素晴らしい。長女を加藤治子、次女を八千草薫、三女をいしだあゆみ、四女を風吹ジュンが演じる。僕がこの4女優を見ていたのは晩年のため、優しいミドルという印象だったが、この作品ではまったく違う。
女としての意地があり、それぞれの人生観で不倫を捉えていく。まったく違う反応を示し、姉妹に関わる男性もいいスパイスとして機能する。主役はあくまでも女性。しかも時代特有のものか、本音はなかなか出てこない。セリフと行動が時にちぐはぐし、セリフのない場面から本音が伝わってくる。その脚本、演出、演技力が素晴らしい。
中でも鮮烈なのが母を演じる大路三千緒。全然そぶりを見せないけれど、どんなに歳をとったとしても女の意地がある。痺れた。

オープニングの荘厳なトルコ軍楽がとにかく印象的で、心を高揚させる。

向田邦子の脚本は、日常に潜む人間の熱い思いを描く。そこかしこに抑圧された女性の内に秘める思いがあることを知らしめる。特に、いしだあゆみさんのシリアスさとコメディ感のバランスが抜群に思いました。毎回わくわくする展開に、時代を超えて色褪せない魅力を感じた一作。ネットフリックスのリメイク版にも期待してます。
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