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姉ちゃんの恋人のkoheiのレビュー・感想・評価

姉ちゃんの恋人(2020年製作のドラマ)
4.0
https://realsound.jp/movie/2020/12/post-682702.html


第1話
登場人物たちがしっかり腰を据えて話をし、なかば執拗に「コロナ禍」を振り返る第1話。その内容の薄さもそうなのだけど、ほんとにこの世界を描いてるのか疑いたくなるほどゆるい世界観。よく言えば愛にあふれているとも。とりあえずいい人しか出てこなそうで安心して観れはする。日中のホームセンターと夜の配送業、いつも裏側にいて出会うはずのない2人が、まるで割れた地球儀が1つになるように混じり合っていく。その世界の優しい回り方を演出する岡田脚本にはグッときてしまうし、なんてったってその2人が有村架純と林遣都なので最高。コロナのある現実を描いてるのにマスクやソーシャルディスタンスの基準が曖昧で、ちょっとそこはいちいち気になってしまうな。

第2話
ずっと上滑りし続けていると捉えるか、火曜日にゆったりと安心して観れるドラマだと捉えるか。本作が長い時間をかけて描写しようとしているのは「日常」であり、それはドラマ的な起伏のない普通の会話によって形づくられる。コロナ禍の世界線を通りながらも、今置かれている私たちの状況とは少しだけズレたような、違和感のある世界。しかし第2話となると慣れてきたしこれは徐々に気にならなくなるのだろうと思う。コロナという「非日常の日常化」は、本作では主人公たちの抱える「過去に負った傷」によって補完されているような感じなので、ここにコロナを被せすぎるとさすがに暗くなってしまうのだろう。ファンタジー的に世界の美しさを描くのではなく、現実をちゃんと映しながら、絶対的な生の営みを肯定し、生きる喜びを伝えようとする本作。百利あって一害なしなのは間違いないと思う。ただ演出がちょっと苦手。好きだけど夢を観る場面は露骨に『カルテット』のすずめちゃん回みたいだったな。
「世界を動かしましょう」
車と自転車

第3話
割れた地球はひとつになり、しかしまた離れ離れに。昼のホームセンターと夜の配送業はお互いの努力なくしては再び邂逅することができない。真人の母親がもみの木を前に涙しそこに桃子が駆けつける場面が異様によかった。そのあとの真人の嬉しそうな表情まで含めて。この世には愛しかないし、優しさしかないし、人を思う気持ちしか存在しないと、少なくともこのドラマを観ている間は思わせてくれる。岡田脚本の「家族」と「(ヘテロセクシャルの)恋愛」に執着する保守性はずっと気になってるけど、いったん保留で。

第4話
ダブルデート回。今までに比べて会話がのってる感じがして、なんの会話だったのかは思い出せないくらい普通の会話だったけど、いちばん成功してる回だったと思う。ちくわのくだり可愛かった。ついに真人の抱えていた闇も明らかに。大事な人に暴力がなされ、人に暴力を与えてしまい、すべてを否定するように裏切られてしまった。彼にとっていちばんの傷になってるのはどれなんだろう。秘めた暴力性に気づいてしまったことなのだろうか。有村架純の母性に助けられる。
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