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岸辺露伴は動かないのタキのレビュー・感想・評価

岸辺露伴は動かない(2020年製作のドラマ)
4.7
高橋一生の第一声にハッとする。いや、高橋一生だと思わなかった。
姿形を原作に似せる以上にこれが岸辺露伴なのだという説得力があった。
どの話をチョイスするかにもセンスがいる。第一話の成功者を生む謎につつまれた別荘地というミステリテイストの物語から言葉に取り憑かれた男を救うという観念的な第二話への振り幅。ラストの第三話はなんとなくファンタジーの香りがする。岸辺露伴と泉京香のキャラクターがしっかりしているので不思議とブレがない。
泉京香役の飯豊まりえが予想を超えてよかった。サバサバした現代っ子な立ち振る舞いとクラシックでデコラティブな衣装のミスマッチがいい。図々しいがなんとも憎めない。

2021年の暮れに第4話から第6話までの新作が放送された。六壁坂がキーワードとなる3遍だ。
自信のない男が唯一の特技である走ることに取り憑かれ、邪魔をするものたちを排除していくというちょっとありそうな話でおびきよせられ、次は背中を見せない奇妙な男との出会いで境目の恐怖に近づき、最後には怪異うずまく六壁坂の只中に放り込まれる。お世話をされるだけの妖怪の存在する意味とは何なのか。ぬるりとした気持ち悪さがあとをひく。
猿之助の怪演が光っていた。

2022年の暮れに第7話「ホットサマー・マーサ」第8話「ジャンケン小僧」を2夜連続で放送。別の話ではあるが、数字の「3」がつなげる2作となっている。流行病が席巻する夏、取材旅行に出かけられずイライラの募る露伴先生がゴールデンレトリバーの子犬「馬琴」を飼い始め、散歩途中の四辻からいつもは行かない神社へと迷い込み、その祠に祀られている神様の結界を破ったがために三か月ドッペルゲンガーになりかわられてしまうというお話。ダークサイドな露伴ドッペルゲンガーはイブとあんなことやこんなことをしてたと思われ…2回目の三か月後にはなんとイブが妊婦に。ヘブンズドアを使いイブを祠にいかせ鏡を左に3回まわして諸々なかったことにするというラストにはモヤッとするが、マーサの耳が4つから3つには戻らないというさらなるオチがあったのはよかった。露伴先生だけ痛みを伴わないのはおかしい。意には染まない結果となったが一度発表したものを覆すのが嫌だという露伴先生、今度は「ピンクダークの少年」の大ファンでマーサの造形に物申す小学生男児にジャンケンでからまれることになる。この話は不思議な話というよりただのジャンケンの心理戦といった感じでちょっとバカバカしくて笑ってしまった。しかし四辻の神様のイタズラが小学生の体を借りるならばこんなのもアリだし、わりに楽しんで見られた。体の一部がいうことをきかなくなる悶絶露伴が見所。高橋一生の身体性の高さと発声の上手さ。あのトンデモ衣装を着こなす飯豊まりえのスタイルの良さに度肝を抜かれる。ウサ耳イブの造形は不思議の国を思わせ古川琴音の小悪魔感と相まって素敵だった。
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