ぐっない

First Love 初恋のぐっないのレビュー・感想・評価

First Love 初恋(2022年製作のドラマ)
5.0
俺の夢は、君を幸せにすることです

好きな人がいる日々って、どうしてこんなにきらきら輝いて見えるんだろう。日常の中で、ふと、その人のことを思い出す瞬間が多くなって。ああこれ、あの人の好きな食べ物だなーとか、こないだここで一緒にアイス買ったなーとか。「見慣れた文字の牛丼の並とか、お天気の晴れとか、木曜日のもくとか、国道のみちとか見るとつい追っちゃう」。好きな人と同じ苗字の、〇〇病院とか。
人を好きになることの美しさが存分に描かれていて、素晴らしかった。高校生時代の也英と晴道は、本当に純粋無垢の象徴のようで、2人でいる瞬間すべてが眩しいくらい輝いていて、この2人ならなんでも出来そうなくらい、美しかった。でもそれは刹那的な美しさというか、大人になった2人はいろいろなことを経験してやっぱり「大人」で、諦めの混じった顔色が悲しかった。そうだよな、と思った。でもそれでも、2人でいる瞬間は美しくて、それってお互いがお互いのことを大切に思ってるからなんだと思った。「好きな人にはいつでも自分の持ってるいちばん綺麗なものをあげたい」というセリフが本当に大好き。だし、この作品も、いろんな人が生きる中で見つけてきた綺麗なものを持ち寄って作られた作品だと思った。だからこの作品も大好き。

記憶喪失とか恋愛ドラマでよくあることだし、初恋の相手を大人になってもずっと想い続けるなんて現実味が無いけど、でも、それでもいいんだよ!!て思えるくらいよかった。画面の中の少ない色の美しさ、ふんだんにお金のかかったスケール、俳優陣の演技の素晴らしさ。みんな素敵だったけど、木戸大聖さん、ほんっとうに良かった。晴道そのもので、演技ではなく、本当にそのときの感情をそのまま表現しているようで、すごかった。あとは言うまでも無いんだけど、満島ひかりさん。彼女の、今にも泣き出しそうな表情と声の震えは唯一無二だと思う。彼女だからこそ、也英という人間の信憑性が生まれたと思う。

也英のお父さんが、鰻のいちばん美味しいところをあげたり。也英が綴に、ショートケーキのてっぺんのいちごをあげたり。私はそういう小さな愛にとても弱くて。それはたぶん、私が大切な人たちにそうされた記憶があるからで。幼い頃、お蕎麦屋さんでいつも海老の天ぷらをくれたお母さんのことを、今でも覚えている。最後の一個をいつも私にくれる好きな人とか。そういうのって、小さいけれど、本当に大切だからこその愛だと思う。
そういう、小さな愛がたくさん描かれていて、すっかり信用してしまった。このドラマのこと。震災とかシングルマザーとか貧困とか病気とかいろいろなことに手を伸ばしすぎな気がするし、強引な設定も多々あったけれど、初恋のつよさ、人を好きになることの美しさをずっとずっと描き続けていて、めちゃくちゃよかった。本当に。はちゃめちゃ好きだった。

YouTubeでトークイベントの映像も観たのだけれど、寒竹監督の言葉に感動した。日本の作品ってすごい。エンドロール、全ての人の名前が英語でも書かれていて、世界中で観られて評価されてほしいという気持ちを感じたな。

「世界を救うことはできないけど、せめて半径90cmの大事な人たちのことくらいは護れる男でいたい」って、最高だなあ。私も本当にそう思う。
ぐっない

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