こうん

サンクチュアリ -聖域-のこうんのレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.4
先に鑑賞済みの妻から若干のネタバレ込みで激推しされて観たら、あらやだオモチロイ!

普通〝マンガみたい〟という表現は貶すときに使われるけど、本作に関してはストーリー展開や映像表現やそのリアリズムがマンガ的でそれがアガるポイントにもなっていて、一級の娯楽作品になっているよね。

なんといっても企画がいいすよ。
相撲という格闘技としての面白さや神事としての格調高さ、それに加えて古い体質の業界で様々な問題(部屋内の暴力や腐敗の権力構造やタニマチの存在や女子禁制問題、そのうち外国人力士も描いてくると思う)を描き出すことに今すごく意味があるし、それがちゃんとドラマとしても機能しているし、なにしろスモウレスラーは世界中に売れるよね。

そんな面白業界が今までほとんどまともに映像化されてこなかったのは、俳優がいない!の一言に尽きる。力士を誰が演じるのか問題ですな。
そこを元格闘家の一ノ瀬ワタルを中心に据えて、元力士をはじめとした巨漢の才能を集めてきっちり身体と体技を作り上げることでリアリティをかなり説得力ある形で提示して解決していると思う。特にメインの力士たちはちゃんと力士に見えるよね。

ただそれには時間とお金が必要で、さすがのグローバル企業Netflixのパワーですよ。
映画を取り巻くストリーミングプラットフォームの存在には色々思うところはあるけれど、日本の中だけでは作り得なかったこの企画が実現してなおかつ面白いという事態には喜ばずにはおれませんです。
取材にも相当金と時間かけてるだろうし、本場所中の土俵周りは多分セット(とCG)じゃないかなと思うけど、この世界観を信じ込ませるためにめちゃくちゃ金かけてますよ。

わたし自身は千代の富士→若貴時代→モンゴル勢の台頭いう大相撲の変遷を熱量のグラデーションはありつつ興味を持って見てきたので、角界のまことしやかに囁かれる噂レベルの事柄も含め、虚実ないまぜにした本作の作り込みが楽しかったし、攻めてんな〜というスリリングさが堪りませんでしたね。あの親方はあの人モデルかな?なんて楽しみながら。一時相撲甚句を聴きまくってので、断髪式の染谷くんの即興甚句にはちょっと漏れそうになったよ。
YouTubeにおすすめ相撲動画も上がってるようになって(怖えーよ)、千代の富士vs貴花田戦とか貴乃花vs朝青龍戦とか伝説的な一番を改めて見ると、めちゃくちゃ面白れ〜。リアルタイムでフツーに観てだけど、振り返ると有り難みしかないよね。貴乃花、今なんかアレだけど、身体デカいし強かったわ。横綱舐めんな。
両国国技館にも何度か観に行ったけど(枡席意外と狭い)、現場レベルで1番拍手がでかいのはいつも高見盛関でした。弱気な自分を奮い起こす高見盛の土俵入りはいつ観ても勇気付けられましたよね。

話がずれましたけど、それなりに相撲好きだったのを思い出しました。そういうのもフィードバックしながら楽しめましたよ。
俳優がみんないいんだけど、1番のキャラクターは静内ですね。
ほとんど喋らない怪物キャラですけど、破格の強さと狂気を秘めたピュアネスが堪りませんし、なにしろ可愛い。あの巨躯でオッチャン(北海道弁で赤ちゃん座りの意)しながらシロツメクサで王冠作る画はファンタジーですよ。
その静内と主人公猿桜のライバル感とか猿翔部屋の人間関係とかジャンプ的でベタなんだけど上がりますよね。それから男尊女卑の世界なんで女将さん役の小雪や仙道敦子は内助の功的なキャラクターなんだけどそれぞれに強かで印象的だし、帰国子女でエリート志向の新聞記者である忽那汐里が、理不尽まみれの相撲に興味を持ち始め、猿桜の理不尽破りの相撲に胸を熱くする様にはちょっとこちらもグッときましたことですよ。
人の一所懸命に、こちらも気持ちを仮託してしまうことはあるよね。
全部で8エピソードだけど、尻上がりに熱量が高くなっていく作りが良かったですね。
少なくともエピソード7と8は一気見だと思う。

シーズン2は絶対作ってくれると期待しておりますが、もっとゴリゴリのスモーアクションと、猿桜の一ノ瀬ワタルさんのスケールアップした魅惑の力士ボディを拝みたいです。

しばらく現実の相撲もあんまし観てなかったんで、次の場所からちゃんと観ようっと。
こうん

こうん