Pippi

母性のPippiのネタバレレビュー・内容・結末

母性(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

最初から最後まで、ずっと辛くて苦しかった。

特にしんどかったシーン。
「あんたの手、生温かくてベタベタしてて
気持ち悪いのよ」
って言われた後、娘が水場で切ない顔して
涙堪えながら手を洗い続けてたシーンが
本当に辛くて泣いてしまった。
どんなに突き放されても、母親に愛されたい
気に入られたいって気持ちが先行するのが
すごいと思う。それは母親と娘の一種の
絆みたいなものからくるものなのかなと思ったり。

高畑淳子さんの演技、もはや見てられないくらいすごかった。
圧を感じるような態度、話し方。
シンプルに怖かった。
自分の娘が家出した時から、どんどん弱っていくのとか
「寒い思いはしてないだろうか」
「律子はちゃんと食べているだろうか」
と、娘のことを考えているという面を見れば
一番母性のある人間だったようにも思える。

そしてなにより戸田恵梨香の演技がやばい。
母目線、娘目線でずっと物語が進んでいくけど
同じセリフでも言い方のニュアンス、表情が
全く違ってゾッとするくらい。
「でも?」の一言で、こんなに心が削られるとは
思わなかった。なんか、目を見るのも躊躇って
しまうくらい引き込まれた。
毎日毎日小言を言われて、精神削られてるだろうに
「おばあさまを敬って。わかるでしょ?」ってまっすぐな目で
娘に言うところに狂気を感じた。

「世の中には『母』と『娘』2種類の女性がいる。
ずっと誰かの娘でいたい人もいる。」
この考えに辿り着くまで、いくつもの壁を
彼女は乗り越えてきたんだって思うと辛かった。
「私はどっちかな」って複雑な表情で呟く娘は
一体どっちになりたいと思っているんだろう。

考えがどんどん広がるような、深みのある作品でした。
Pippi

Pippi