pika

すべてをあなたにのpikaのレビュー・感想・評価

すべてをあなたに(1996年製作の映画)
4.5
すごーく面白かった!音楽好きで映画のサントラを集めている方に『これは映画自体もサントラもいいよ』とおすすめをいただき見てみた。確かに曲がめちゃくちゃいい!田舎のティーンバンドがあれよあれよと人気になりビルボードにチャートインするまで上り詰めていくドラマなんだけど題名にもなっている『THAT THING YOU DO!』という楽曲がめちゃくちゃ良くて、この曲で売れていくので劇中何度も演奏されるんだけど何度聞いても飽きないしむしろ流れるとテンション上がる。それ以外にもジャズやバラードなど他のアーティストの曲も素敵で、全て映画のために作ったオリジナルらしく、確かにサントラ欲しくなるわと納得。

音楽界の栄光と挫折みたいなよくある筋書きながらも主軸は青春ドラマで、主人公が様々な人に出会い経験をし大人になっていく様が重点になっていて、酸いも甘いも描きながら教訓的な部分は軽やかに処理され全編穏やかな幸福感に満ちている。
トム・ハンクスの初監督作品で脚本、出演、作詞作曲もしているとのことで彼の人柄かセンスか、さすがコメディアンな才能が映画に反映されている。コミカルな間合いやドラマの緩急、人物造形など娯楽として満点な語り口で心地よく楽しめる。
ドロドロとした業界の裏側云々ではなくあくまでも青春ドラマであるとしているようにキャラクターがとても愛らしく魅力的。
主演のドラマー君はトム・ハンクスを彷彿とするようなコミカルな表情、仕草がとても良い。ヒロインのリヴ・タイラーの愛らしさも最高。クラクラするほどキュート。メンバーも個性的でそれぞれ多様な価値観で人生に直面していて、同じ出来事を経験していても捉え方が違っているというのをハリウッドの夜の過ごし方で見せている点が面白い。今のこの瞬間同時に演奏しているだけという交わり方が何気なくも深い。ハリウッドの高級ホテルでのドアマンとの応対の差で見せるキャラクターの変化も上手い。コメディ映画的なキャラの扱いもフィクションの楽しさが出ている。
実話物みたいなエンディングも面白い。その瞬間に何を重視し何を選択するのかで人生は変わっていくんだなー。

主人公のドラマーが仲間になる流れ、小規模な地元のコンテストで曲を初披露する流れなど、ドラマの流れを追いながらそれが楽しさへと昇華されているコメディ演出がとても上手い。初めてラジオから流れる瞬間に走り出すリヴタイラー、そこから集結して電器店ではしゃぐスピード感と多幸感も素晴らしい。なんて幸福なんだろう。
すごく良かった。久しぶりに人におすすめしたくなる、万人が楽しめるであろう傑作だった。

10代か20代前半に見ていたら人生のお気に入りの1本になりそうな映画だった。4点くらいなんだけどおすすめしたい気持ちを含めて0.5点アップ。
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