Jun潤

ONE PIECE FILM REDのJun潤のネタバレレビュー・内容・結末

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2022.08.09

原作者・尾田栄一郎が製作に関わる『FILM』シリーズ第5弾。
今作のために最新刊まで全部読んでの鑑賞です。
アニメの方は全く追っていなくて、ネットの方で最近作画がいいと話題だったのでそこに不安は感じず。

“偉大なる航路”エレジア。
そこで今まで姿を見せなかった謎の歌手・UTAのライブが開催されることに。
それに参加した「麦わらの一味」だったが、UTAの姿を見たルフィは突然ステージの上へ。
何やら顔見知りのようだが、UTAの正体は現“四皇”の1人、“赤髪のシャンクス”の娘・ウタだった。
久しぶりの再会を喜ぶルフィとウタだったが、ルフィが海賊をしていると聞いたウタは豹変。
このライブの本当の目的、ウタとシャンクスの関係、そしてエレジアでの悲劇の真相が明らかとなり、ウタを救うため「麦わらの一味」が立ち上がる!

やっぱ『ONE PIECE』っておもしれぇんだよな…
作品自体は敵とゲストをウタに絞り、キャラクターの掘り下げをメインに、原作では見られない赤髪海賊団との共闘などが見られるファン必見、垂涎ものの大作。
あとは『STAMPEDE』で味を占めたのか若干のオールスター要素。
エレジアでの冒険要素、ウタの能力の謎加減や、とりあえずバトル!よりもシリアスな設定で進める感じは、類似作品をあえて挙げるとすれば『オマツリ男爵』かなといった感じ。

まず作画については個人的にはあまり刺さらなかったかな、と。
今までのようにルフィ+ゾロとサンジのタイマンバトルではなく、あくまで各勢力入り乱れての大乱闘がメイン。
これはこれで『ONE PIECE』っぽさを感じましたが、それはそれとして、アニメ映画としての完成度も高かったものの、評価を上げるほどかと言われると、うーん…。

しかし今作最大の見どころの一つとも言えるUTAのライブシーンについては、3Dモデルや手書き作画、アニメならではの特効を使ったド迫力の映像に、Adoの高い歌唱力と様々なクリエイター陣の創造性によって、観応え聞き応え抜群の出来。

そして原作者監修による原作とのリンクについては、ジンベエの存在、ナミといるゼウス、ロビンの“巨人咲き”にウソップの見聞色の覇気など、原作を読んでいるからこそ楽しめるファンサもマシマシでしたね。
合体技にも見えるサンジの“魔神風脚”、“閻魔”だったか判別が付かなかったゾロの刀などは、見方が色々と広がりますね。
そしてなんと言ってもギア“5”!
単行本最新刊で初出しですしアニメに出るのはまだまだ先だというのにここで出すのは流石にズルい、めっちゃ胸熱。

あとは原作キャラクターのゲスト出演。
ローや黄猿、コビーなどの『FILM』常連組に加え、今作にはついに「ビッグマム海賊団」も登場していました。
“万国”編を見てたらよくわかるカタクリとブリュレの関係も描写されていたし、目的が共通していたからこその共闘もまた良かったですね。

さらにさらに「赤髪海賊団」総登場!!
シャンクスまじカッケーし、ウソップの父・ヤソップとの連携はシャンクスとウタの親子関係ともリンクしていました。
すげえ“覇気”ぐらいしか戦闘描写のなかったシャンクスのガチ戦闘や、相変わらずのすげえ“覇気”など、先日発表された最終章への期待がモリモリに上がる展開でしたね。
今まではシャンクスがあえてルフィに会わないようにしていましたが、今作ではそこにシャンクスがいることもわかっているのに会おうとしないなど、ルフィのシャンクスに対する想いも描かれていたのがまた良かったですね。

最後に今作のメインキャラクター・ウタ。
あえて彼女の時系列順に追っていくと、略奪だとか事実婚とかではなくマジでちゃんとシャンクスの娘じゃなかった。
しかし原作で描かれていないシャンクスの出自とリンクしているとなると、もしかすると重要な伏線なのでは…!?
そして「赤髪海賊団」の音楽家としてルフィとの出会いと交流。
ルフィの左目下の傷が無いのを見ると原作第一話よりも前の話。
これはなかなか貴重ですね。
あとルフィは原作第2話か3話の時点で音楽家を仲間に入れたがってましたが、そこに繋がる話でもあったんですね。
また、ルフィの夢が“新時代”というセリフがありましたが、これが幼いサボとエースが聞いて笑い、シャンクスがレイリーに言ったロジャーと同じ言葉で、ヤマトが聞いたルフィの“夢の果て”だったのか、もしそうだとしたらとんでもねえ先出し情報ですよ。
エレジアは“新世界”っぽいですが、“東の海”からエレジアに行ってフーシャ村に帰ってこれる「赤髪海賊団」とは一体…。
ウタのウタウタの実の能力やその能力があって目覚める“魔王”の存在など、劇場版らしいなんでもあり感もこれはこれでまた良し。
作中のウタの行動についても、エレジアの事実を知らないことからくるシャンクスとの確執、事実を知ったことからくる自殺衝動、映像電伝虫の中継やファンの声を聞いたことによる、海賊被害の実情からくる目的と、特典単行本が無くても作中の動きだけでキャラクターのストーリーが伝わってくる良い仕上がり具合。
思えば「麦わらの一味」が立ち寄る島は大体海賊が迎えるのが当たり前でしたが、本来はかつて“ドラム王国”があった冬島のように、嫌悪されるのが常というもの。
海賊の物語として、そこから逃げずに描くというのはかなり重要な気がしました。

さて、原作では“ワノ国”編も終わり最終章に突入。
映画の方であと出来ることといえば、『FINAL』と『FOREVER』ぐらいのものでしょうか。
なんだか寂しい気もしますが、映画に合わせて原作を引き伸ばすよりは、その方が潔いのかな、なんて思ったり。
Jun潤

Jun潤