Eyesworth

RRRのEyesworthのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.9
【成分律の使命VS不文律の友情】

S・S・ラージャマウリ監督の爽快アクション満載のインド映画

〈あらすじ〉
イギリス植民地時代のインド。ゴーンド族のビームは、軍に連れ去られた少女を奪還すると誓う。そんな中、ある列車事故をきっかけに、ビームは警察官ラージュと友情を育んでいく…

〈所感〉
『きっとうまくいく』以来のインド映画鑑賞。関係ないが、今私が読んでいる哲学者の千葉雅也さんの『センスの哲学』において、我々が映画を味わう際は得てして、「この映画にはこういう意味があるんだ!」「監督はこういうメッセージを我々に投げかけているんだ!」と物語全体を通じて大きな意味を求めてしまうものだが、一旦その感想を保留して、細部のうねり・リズムに目を向け、耳を傾ける地味な鑑賞を奨めていた。この映画なんかは特にそうした鑑賞に向いていて、本作からやはり友情は素晴らしい!インド映画って楽しい!と読み取ることは簡単だが、それは一旦置いておこう。チャプターを分割した際の圧倒的なメッセージ量とその熱量が凄まじく、我々まで彼らと一緒にナートゥを踊ってしまいたくなるこの地響きのような衝動はなんだろう。成分律と不文律、火と水の交わらない対照的な二人の人物がこの作品において独自の絆を紡いでいく様に感動を禁じ得ない。こういうエンタメでインドには到底叶わない。我々はこうも気軽に歌えないし踊れないし楽しめない柄だから。でもこの映画を見ている時は似合わない自分を発掘できて楽しくなった。ただ、アクションが非常に長いので、個人的には『きっとうまくいく』の方がリズムがあって好き。改めてあの映画の素晴らしさにも気付けた。
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