ぽん

ドライビング・バニーのぽんのレビュー・感想・評価

ドライビング・バニー(2021年製作の映画)
3.2
ケン・ローチ風味。同じように福祉制度によって子どもを奪われる「レディバード・レディバード」(1994)を思い出した。

前科あり職なし家なしのシングルマザー、バニー。妹の家に居候しながら違法バイトで小銭稼いで、いつか子どもたちと一緒に暮らすんだと夢見るもなかなか上手く行かない。なんでか。
これ、本人も言ってたけど「怒りが抑えられない」ってその衝動性のせいですよね。怒りそのものは間違ってなくても(子どもや姪を守るためという)、だからってそこまでやっちゃいかんでしょということをやるんです。彼女は。

今、目の前で起きていることに対して後先考えずに脊髄反射で反応してしまう。短いスパンでしか物事が考えられない人というのは長期的には多大な損失を被る。なんだか嫌味な言い方になってしまったけど、でも語られている内容はそういう事。もしかしたらケーキを等分に切れない非行少年たちと似た話なのかも。切ない。

ただ、こういう人はフィクションの中で光り輝きます。映画の登場人物なんて大概がこういうキャラかと。ってかこうでなきゃ物語にならないですよね。
川から大きな桃がどんぶらこと流れてきた時にそのシチュエーションの異常さを考えたらスルーするのが賢明だろうに、その場のノリで拾ってさらには食べようとまでするリスキーな人物がいなきゃ物語は始まらない。

話が横道に逸れましたが、とにかく無軌道でパワフルな迷惑系マザーのやらかしまくりをハラハラ(もしくはイライラ)しながら見守る、そんな作品。アメリカン・ニューシネマっぽい雰囲気もあり。ニュージーランドの映画だけど。
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