なんということもない地方の理髪店一家の話。
身近な町の話でよく知る風景、炭鉱で賑わった頃の半分に満たない人口の大牟田、寂れた感じは隠しようもない。そこの話なので単なるドラマというふうに見るのは難しかった。東京に就職してわずか1年で後を継ぐ、街を活性化すると言って帰ってきた息子。父はかつて東京で夢を諦め親の跡を継いだ自分の中に負け犬という大きな大きなわだかまりを抱えて息子を見る。
「東京から来て帰っていく人間が町を美化し若者を持ち上げて、そんなにいい街ならここで暮らせるか？」と。そこに都会と田舎の決定的違いがあって古き良き町並みを喜びたまに観光で行く田舎には変わらないで欲しい、都会の人のエゴだ、そこに暮らす田舎の人だって都会と変わらない便利な暮らしを望むのだ。淡々と描きながら限界集落、消滅集落、少子化、様々な問題を突きつけてくるなかなか一筋縄では行かない話だった。
芸達者が揃って方言も違和感なく役者さんて凄いなぁと改めて感心した。
