ろく

VORTEX ヴォルテックスのろくのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
4.8
50過ぎてから「死ぬ」ってことをリアルに考えるようになってしまった。

たまに心臓あたりが痛かったり(筋肉痛)、頭が痛かったりすると心配でしょうがない。先日も頭に違和感ありさらに指先が痺れていたので脳神経科に行った。CTまで撮りましたよ。

そんな僕にはどうにもいやーな気分になって仕方ない一作。どんなホラーよりも鬼畜な話よりもリアルに「嫌な映画」だと思った。一見、ギャスパー・ノエらしくないという意見もあるだろうけど十分「らしい」映画である。だって観た後茫然で食事ものどを通らなかっもん(無理して食べた夕食の美味しくないこと!)。

そもそも人間に平等に来るのが「死」なんだ(山田風太郎)。でもね、その前に苦しんだりするんだ。それを僕らは「見ないフリ」をする。でもこの映画はそこを「無理やり見せる」。そんな映画は「いい映画」のわけないじゃないか。しかもその撮り方が半端ない。観てげっそりするから。ほんとの話。だって対岸の火事じゃないんだもん。

二分割の画面は僕らに「死ぬときは一人だ」と教えてくれる。いやいや、その前の「苦しむときも一人」なんだよ。苦しみなんかわかってもらえないの。あくまで「独り」。それを僕らは「家族が」、「恋人が」、「妻が」、「夫が」、「子供が」、「友人が」って希望(それは信じられないほど無根拠なものだ)で「生きる/苦しむ」。でもね、それは嘘なんだよ。最後は「独り」なんだ。そんなことをぐいぐいと僕らに押し付けてくるんだ。ああもう勘弁してくれ。

ココには中途半端な救いはない。でもそもそも「救い」なんて虚偽なんだよ。そこをギャスパー・ノエはついてくる。「お前たちはいつか一人で死ぬんだ」そして「お前たちの苦しみは誰も理解してくれないんだ」。僕がいままで観た映画の中で一番「鬱」な映画だと思う。だって他の映画はある意味自分にはおきない(と信じている)と思っているけど、この映画はお前たちに「必ずおきる」。その「あたり前」を堂々と突きつけてくる。やっぱり勘弁してくれだよ。

ちなみにCTの結果は後頭神経痛と肩こりでした。とりあえず安心。でもほんと最近心配が増えるようになったんだよ。これが「老い」ってことなにか。人生ままならない。

※今回こんな文章を書いたけどとにかく殴られる感MAX100%の作品なんで評価はアゲ。というか正月見る映画でないね。横で見ていたお客も茫然としていたよ(ご老人)。終わったあとに「なんてもん見せるんだ」とスタッフに食ってかかっていた。いつもは老害なんて気にもなっているが実際「なんてもん見せるんだ」。同感である。

※最後はネタバレになるので書けないがとにかく呼吸が止まるほど画面に釘づけになってしまった。最後の30分は派手さはないのにどんな映画よりも身動きが出来なくなってしまった。背筋を伸ばした30分。
ろく

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