アァーーーーーー

VORTEX ヴォルテックスのアァーーーーーーのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
3.6
ノエ版の「愛アムール」だろうと予測していたし、まあ大体同じではあるが、前作「ルクスエテルナ」での強烈な復活に歓喜した私にとって、本作はノエ特有の人を嘲笑うかのような狂気や毒が一切なく、淡々と死へ向かう老夫婦が描かれているのが斬新というか、逆に期待を裏切るような内容で好感は持てつつ、love3dやクライマックスのテーマとも被る部分もあるが、映画内での伏線の回収や、メトロポリスのデカいポスターや意味ありげに置いてある物からメッセージも深い意味があるようにはかんじられず、基本老夫婦の生活を見せられるだけなので眠くなるしキツい作品ではあります。二分割の画面もルクスエテルナほど活用されていません。
家の至る所に所狭しと置いてある物物物は私も同様に人生において蓄積されてきた記憶でありつつ、自分を表すのもであると同時に、捨てることへの恐怖に打ち勝てない。
私が毎日の仕事にてジジイババアの対応に頭がおかしくなり精神が病む事が多々ある。
それは確実な「認知症」という大ボケを喰らっているからであり、そういった仕事や環境から離れてストレスのたまらない人生にしたいと毎日毎日願いながら生きているが、認知症になるような老人こそ仕事もせずヒマを持て余して昼から徘徊しているストレスフリーな環境にあり、逆に「おっ?」と思わせるキレの持った老人こそ現役バリバリで働いていたりするもんで、認知症になるとプラモデルのような「順番があるもの」を作れなくなるというのも、毎日生きていくために「覚えておかなければならない」記憶から解放されているからである。
そして私も歳をとり、テレビで活躍していた芸能人は次々に召され、死や環境の変化が近づいている恐怖。
子供との会話や家族構成、書類を破いてしまうシーンや、そしてラストの荷物が片付けられるシーンなど、人間とはこうやって短い人生を終えるのだ、という普遍さの恐怖から学ぶ対処法の無さを突きつけられる。
作っていた薬の描写、ガス点火後の祈り、初主演の割に演技が上手かったダリオアルジェントの起用経緯が気になる。
アァーーーーーー

アァーーーーーー