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サント VS ゾンビのドントのレビュー・感想・評価

サント VS ゾンビ(1962年製作の映画)
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 1962年。メキシコの英雄的レスラー、エル・サントには文字通りの「ヒーロー」の顔があった! 死者どもと死体使いが引き起こす怪奇事件をエル・サントが殴る蹴るで解決するスーパーヒーロー映画、プロレスの試合風景添え。
 日本で有名なルチャ・リブレ(メキシコプロレス)の選手といえばミル・マスカラス、その大先輩にあたるエル・サントの母国での人気は絶大なもので、これに乗ってサント絡みの映画は50本近く作られている。寅さんである。映画となればヒーローとしてのサントの活躍と共に、巡業に回れない地域や時期でもサントのプロレスが劇場で観れるという寸法だ。かしこい。
 内容としては牧歌的というか、ロメロ以前のゾンビ映画として貴重である(頭を撃ち抜いても死なない!)点はありつつも大変まったりしており、平たく言うと面白味に乏しい。一方で「マスクにレスラータイツ、入場時のマントをひるがえして捜査し戦うプロレスラー、サント」という絵面は相当に面白く、ヒーローという存在について考えさせられる。
 サントのリング外での活躍がモタつきすぎじゃねぇかとかプロレスのシーンが多すぎねぇかとか敵のモニタはどこまで映すんだとかそういう感想も持つけれど、これはサントのためのサント映画であってそういうことを言ってはいけないのかもしれぬ。作った側もサントの英雄性を微塵も疑っていないのが伝わってくる。我々にできるのはビバ・サントと叫ぶことだけである。
 映像としては唯一、宝石店を襲う前のゾンビたちが車内でヌウッと首を巡らすその異様な動きと闇夜に浮かぶ顔の白さで「アッ、これは生きているものではないっ」と観客に直感させる演出が素晴らしかった。
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