2001年。いとおかし。なんと奥ゆかしいホラーであろうか。閉鎖され老朽化した精神病院のアスベスト除去作業に入った男たちがおかしなモノや妙な人影を見、そして、徐々に……
オバケは姿を現さず、音や声でビックリもさせない。患者の診察音声と荒れ果てた内部だけがこの建物の異様を語る。禁欲的で実に素晴らしい。
この映画の主役は廃墟である。本物の精神病院の廃墟というロケーションと雰囲気作りが抜群で、怖いことの大半が真っ昼間に起きるのもいい。
血は出るし残酷な描写もごく一部ある。しかしそれらはスプラッタのような「ハレ」とはならない。恐怖も暴力も狂気も、主役たる廃墟の薄暗い泥の中に沈んでいく。
もうちょい怖いこと厭なことが起きてほしい気もするが、ギリギリのところかもしれない。声の出演含めてキャストが全部で11人というミニマムさもナイス。異様な空間に、人間がゆるりゆるりと取り込まれていく様子に浸る。これはそういうホラーであろう。しみじみと旨い。