叡福寺清子

ピンク・クラウドの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.3
触れたら10秒で死に至るピンク色の毒雲が広がった世界.人々は完全なる外出禁止・・・どころか窓すらも開けられない生活を余儀なくされます.そんな世界で人々は何を想うのか.もし私が出先で閉じ込められて,かれんさんとは二度直接合うことができないと分かったら,死んだほうがマシな三遊亭呼延灼です.こんばんわ.わりとマジで.もしくは,厚手のビニール袋で防護服を自作して,どうにかかれんさんのいらっしゃる所に辿り着く努力をいたします.途中で野垂れ死んでも,指くわえて生きるよかマシです.

視聴中傑作「プラットフォーム」を連想し,宗主国のスペインと似た思考になるんだねぇって楽屋で喋ってたら,林家陳宮に『おめぇは馬鹿か,ブラジルの宗主国はポルトガルだ!』と突っ込まれて恥をかいてしまいました.アイツ,殺す!
で,なんで思い出したかって言いますと,シミュレーション要素が強かったからと存じます(当然,人の描き方は全く異なりますが).そういった意味では綺麗なプラットフォーム・・・いや,さすがにそれは褒めすぎかしら.

一歩も外に出ることができなくなった世界.自宅にいた人は幸い.ある人はコンビニで見ず知らずの人達との共同生活を,ある男性は娘と娘の友人数名との生活を余儀なく・・・いや待てよ.それってただのハーレムじゃ・・・ほらな,生身の人間と触れ合う機会がなくなったんだもん.友達の父親でも男は男だし,父親だってまだまだ現役.当初は少女だったにしても,年を重ねりゃそりゃねぇ.それをいくら姉が非難したって,何もできない事実が重く横たわります.そう,それぞれ個々人の世界は,その場で完結しちゃうのが本作の世界.圏外にいる他者が介入できる余地は0.001ピコメートルもございません.であれば,個人的にはもっと多角的に人々を描いて欲しかったなぁと少し残念でした.メインに据えたジョヴァナとヤーゴ夫婦が,比較的物わかりのいい二人だったので,悪意という意味では薄味だったなぁ.そう,私は,人の悪意を信じる人間なので,妙にわかり合える関係性というのは居心地が悪いのです.VR世界に現実逃避するのなんて,全然かわいいもんです.
何年も何年も政府支給の食いモンじゃ気が狂いそうだ,だったら人でも喰っちまうか,どうせ殺人バレたって警察が来ることなんてないんだから.私が観たかったのは,そういう世界でございます.残念!!