わっしょい

サバカン SABAKANのわっしょいのネタバレレビュー・内容・結末

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ひと夏の、一生の思い出。

「僕には、サバの缶詰を見ると思い出す少年がいる。」から始まる少年時代の回想。
貧乏で浮いていたクラスメイトの竹本に誘われ、イルカを探すちょっとした冒険に出る少年時代の久田。
2人が過ごしたひと夏の物語。

2人の少年が少しずつ、でも急激に仲良くなっていくのが良かった。
イルカ探しの冒険のたった1日で、2人が久ちゃん、竹ちゃんと呼び合う親友になっていく過程がとても尊い。
小さい頃って、ほぼ初対面でそわそわしていた所から、突然昔からの友達みたいな距離感になっていたりしたなと、懐かしくなった。

サバ缶を見ると竹ちゃんを思い出すというのが印象的だった。
自転車が壊れて、不良に絡まれて、海を泳いで渡って、ちょっと歳上の綺麗なお姉さんに助けられて、そんな濃密な冒険をした1日よりも、サバ缶寿司を振る舞ってもらった1日の方が久ちゃんにとっては濃い1日だったのかなと。
将来の夢を語り合ったあの1日を、ずっと大切にして生きてきたのだろうなと思わされた。

すぐに連絡の取れる現代では、数年単位で連絡を取ったり会ったりしていないと他人になってしまうような気がする。
少なくとも自分は劇中の竹ちゃんみたいに「相手から友達と思われていなかったら」とか考えてしまう。
便利ではない時代で育まれた友情だからこそ、連絡なんて取れないのは当たり前で、数十年会わなくても心から友達と言い切れるのかなと思えた。
またねと言って別れたあの駅でよそよそしさのかけらもなく再会する2人と、「今も友達だ」という草彅剛演じる久ちゃんのナレーションで、涙が出た。

このラストシーンまででも充分に凄く良い映画だったと思うけれど、泣くほどの感情移入や感動はしていなかった。
ただ、このラストだけで、一気に心揺さぶられた。
回想ではなく現代で、2人の友情が変わらないことが映されるラストシーン。
時間軸が現代になったことで、変わらぬ友情の美しさや尊さがより鮮明に感じられて、とても感動した。
わっしょい

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