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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのi9のレビュー・感想・評価

3.7
ここまでカオスに作り上げ、最終的に一般大衆にウケるようにも落とし込まれてる構成にあっぱれ。

小ネタを挟むことにより、コアな映画通から一般大衆まで幅広い層を唸らせる、非常にバランスがいい映画として完成されている。

◾︎視聴前の考察
A24の新作ということで、話題のエヴエヴ。
コメディアクション映画ということでパスかな?とも思ったが、主人公エヴリンの設定として「ADHDがあり、その特性そゆえに別の世界に入ってしまう」というものらしい。しかも、本作を創るに当たり、監督のダニエル・クワンは、ADHDを安易に扱ってしまっていないかと心配になり、ADHDに関して調べていくうちに、自身もまたそうであることに気がついたそう。その結果、なぜ自分の人生がこれまでこんなにハードだったのかを理解することができ、ホッとしたとインタビューで答えていたので、そうとなってはA24好きのADHDワイ、観ないわけにはいかないよね。

ADHDは、特性として想像力豊かでアイデアマンが多い。しかし、ケアレスミスが多く、細かい事務作業が大の苦手だ。そのため、アイデアは抜群にあるのにも関わらず、何をしても小さな失敗が積み重なり、思い通りに行かず、「どうせできないから仕方ない」と物事に挑戦すること自体を諦めてしまう人が多い。主人公のエヴリンもまさにそうだ。監督のクワンも診断を受けるまでの30年の間、自分の無力さを感じながら過ごしてきたからこそ、エヴリンに自身を投影しているのではないだろうか。


◾︎視聴後の感想及び考察
ぶっ飛んでいてカオス。私は割と好きな方だったけど、めっちゃ健康状態がいい時じゃないと正直観るのキツい。序盤から情報量過多なので脳の処理能力のキャパを超えて眠くなる。ちょっとでも睡眠不足なら確実に寝てしまう。赤ん坊が人混みやうるさいところに行くと寝てしまうみたいな、まさにあの現象が起こる。

しかし、掘り下げるとプロットとしてはとってもシンプルで、伝えたい内容もストレートでわかりやすいので、どんな人が観ても「意味わからなかったけれど、最後に伝えたい教訓はなんとなくわかる」という状態までには持っていけるような構成になっている。
だからこそ、エルトポみたいな感じで「みんながわからないものがわかる俺かっこいい」みたいな人が高評価つけて語りそうな映画だなぁって思った。(ど偏見)

ここまでカオスに作り上げ、最終的に一般大衆にウケるようにも落とし込まれてる構成にあっぱれ。小ネタを挟むことでコアな映画通から一般大衆まで幅広い層を唸らせる、非常にバランスがいい映画として完成されている。

正直、一章の終了時点でもうお腹いっぱいになってしまったし、3章が始まってからは「まだ続くんかこれ?!?」と思ってしまった。家で終わりの時間を確認しながら観たい気持ちもあるが、そうすると確実に一時停止して寝てしまっていたと思うので映画館でよかったのかも。笑

めちゃくちゃカット変化するし、かと思いきやビックリするぐらい静止画でちゃんと見せてくる時間もあったり時間の使い方が上手い。やりたいアイデアを「マルチバース」という禁じ手を使いパワープレーでまとめ上げるのズルすぎる…!!(褒めてる)
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