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すずめの戸締まりのi9のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.6
【久々クソ長レビューです】

今更見た。私的にはすごく良かったが、どうも友人は刺さらなかった様子。

友人の本作の批評はこうだ
「左大臣に本音を言わされていたのが嫌だった。『言の葉の庭』は自分の意思で自分の気持ちをぶつけて、それでも自分たちの力で修復していくのがよかったのに、今作はそれを怪異のせいにしてた」


確かに君の名は以前の作品はリアルなエモで売っていた。

怪奇といえば怪奇だが、とっかかりとしては私はグッドだと思う。私たち入れ替わってる〜でヒットしたし、ある程度のドリームはフックとして必要だったと思うを「君の名はの監督の作品」ってので見る人は多少のファンタジーも望んでいる気がするし、新海誠はお子様にこそ今作を見て欲しかったんだと思うしある程度キャッチーさは必要だったはず。

というのも「東日本大震災」は我々世代は最近に感じるけれども、彼此12年?とか経つわけだ。もう我々世代のように経験じゃなくて、今の子はもう知識として歴史として学んでるんだよね。

関東の私たちにとっては「あー12年前そんなことあったなー」で終わるけれど、まだ被災地の人にとっては終わってない。それを新海誠は今伝えたかったんだとおもう。

今作のように小さい頃両親を亡くした人、若くして孤児を引き取った人、いたと思う。
一見幸せそうにみえるけれど、やっぱりどこかお互い気を遣っていて。
左大臣の影響もあるとは思うが、実際もおばさんは思っていだことだと思う。

精神的におばさんもあそこまで追い詰められると、左大臣云々なく多分言っちゃうと思う。

現に「あんなこと思ってなかった」とか「左大臣のせいだ」なんてこと言ってない。

「ああいう思いもあるが、それだけではない」と後からも言っている通り、少なからずそう思ってきていたんだろう。後から「あんなこと思ってなかったごめん」なんていうことは簡単なのに、そうは言わせなかった新海誠にはあっぱれである。


この描写は新海誠からの救済だと思う。
現実世界で、血の繋がらない家族と生活をして、いつもはお互いに気を遣っている方々の中には、ついこのおばさんのように酷いことを言ってしまった人や、言ってはないけれど、そう思ってしまっている人が多くいるはずだ。言わなくてもそう思ってしまう自分にどこか罪悪感抱いてしまっている人がたくさんいるはずだ。そんな人々に「こう思ってしまっているのは私だけじゃないんだ」と思わせてくれる。そういう重要なシーンなのではないだろうか。

あまりにも切ないから左大臣乗っ取られたみたいな演出にしたのかもしれない。現実世界でそういう現実の人が「あの時のわたしも左大臣に乗っ取られていた???」とか思えるよくな心の免罪符としての役割が左大臣にはあるかもしれない。

震災からセカイ系映画公開が自粛されていたが2016年に『シンゴジラ』も『君の名は』が公開された。当時も賛否はあったがこの二作に心を動かされた人は多かったはずだ。

10年以上経っても、こうして直接的に地震について描くことは、絶対に物議を醸し出すと監督自身分かっていたはずだ。

それでもその覚悟の上でこの時期に新海誠が出したというこたはすごく勇気ある行動だし、それでも監督は出したかったんだという想いが伝わる。

地震を経験した人、知識として歴史として学ぶ人が交差する、そんな今だからこそ意味があると決算したのであろう(公開から時間経っているから今ではないが)

12年前の出来事は過去ではない。
今でも、すずめとおばさんのような関係性の人も日本にはたくさんいる。まだ震災は終わってないんだということが伝えたかったのではないか。

車乗せてくれたにーちゃんが宮城で「ここいいところで綺麗だなぁ」と言った時のすずめの「え、ここが綺麗?」と血相変えたときは痺れた。震災経験者とそうでない人の違いがここではっきりと示されている。


すずめの死生観の変化もよかった。
最初学校の扉閉じる時、椅子()に「すずめさん、あんたは死ぬのが怖くないのか?」と問われ、「怖くない。死ぬか生きるかなんて運だろ」と即答しちゃうくらいだったのに、最後死にたくないとまで言わしめる急成長。

「死ぬか生きるかなんて運だろ」とまで高校生に言わせてしまうくらいの力が震災にはある。知ってる人が何人も亡くなり、そりゃ運と思ってしまわざるを得ない。そりゃ自分のこと大切にできなくなるわけだ。アニメだからよくある主人公最強アニメやすごくいい性格の主人公のアニメと見分けしづらいが、すずめそんなタイプではなくわりと人間味がある。しかし自己犠牲の精神が異常で身の危険をおかしてまでも人に尽くしすぎている。「わたしなんか生きてちゃだめだ」が根底にあるため、人に助けを求められる救うことで自分の存在意義を確かめている感じがする。


常世にいる小さい時の自分自身を最後救うシーンはとても良かった。

スズメはおばさんに引き取られてから、気を遣って「甘える」ってのができなかったはずだ。泣いたり甘えたりわがまま言ったり。子どもらしさを封印してたんだと思う。
そんなこどもらしさのメタファーとして常世に幼い頃の自分自身が閉じ込められていたんだと思う。そんな自分自身を最後救ってあげるのが良かったな。でも良かった最後は自分のこと救えて、閉じ込めているインナーチャイルドと自分自身を一体化させることができてとても救われる映画だった。

大臣もまたすずめのインナーチャイルドを表しているし、自分が最初に「うちの子になる?」と声をかけたはずなのに後から酷いことばをかけるという点ですずめとおばさんの関係と大臣とすずめの関係性まんまなのが面白かった。

すずめが色んな人と関わり成長する姿には胸が打たれた。
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