SAtone52484

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのSAtone52484のレビュー・感想・評価

4.6
やっと行けた!そして、『スイス・アーミー・マン(2016)』によるダニエルズ恐怖症(というか、トラウマ?)を克服できた気がする、記念すべき作品です。



アカデミー賞前後にかなり話題となり、キャスト陣の各種アワードでの感動的なスピーチなどで、その熱量は感じていたけれど、「こりゃすごいもん観たな」と言うのが素直な感想。
マルチバースとか、カンフー強めのアクションとか、いわゆる映画の王道的な設定と、親子・夫婦の関係という普遍的なテーマのバランスが良かったと感じました。
(余談: 『スイス・アーミー・マン』の時は、設定がブッ飛んでたのは好きだったけど、オチと意図が意味不明、というか怖すぎて、面白い要素とか全て帳消しになってしまったんです…)
要素としては、既視感のある設定はあるけれど、全体を通して「どんな映画?」と聞かれたら、答えられない… まさにユニーク!

この脚本を読んで、出演しよう、と思ったミシェル・ヨー、ジェイミー・リー・カーティスがすごい。
下品ではない、けれどこの奇想天外な要素を脚本から読み取り、面白そうと思ったんだろうから、大御所お二人はセンスあるし、かなりのギャンブラーと見た!
ジェイミー・リー・カーティスが、何かのインタビューで「アカデミー賞は”ショーレース”。やってやろうじゃないの。」的なことを言ってましたが、まさに脚本選びからあっぱれです。



マルチバースにフォーカスがあたりがちですが、個人的には「エブリン(演・ミシェル・ヨー)の人生」の方が深かった。
あの時、別の選択をしていたら… ってのはよくある設定ですが、ここまで「今のあなたは『最悪の選択』を繰り返し、もう、底がないレベルです」ってのは珍しいのではないかしら。
そこに、疎遠だったけど引き取った父、お人好しで頼りない夫、都合のいい時しか連絡してこないウマの合わない娘、が登場。
特に娘は、マルチバースの設定的にも、母を目の敵にする訳ですが、そんな母に人生の教訓を見ようとしているところもあって、自分の反抗期の頃をふと思い出し、エンディングはほろりときてしまいました。

まさか、この手の作品でほろりするとは…

あとは、目眩くマルチバースの設定の嵐。
ダニエルズの頭の中、どうなっちゃってるの?だし、そのアイディアを(多少手作り感あっても)映像で表現し、見せる執念を感じました。

もう一回みたら、もっと細部まで楽しめそう!
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