パイルD3

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのパイルD3のレビュー・感想・評価

3.5
 これも3月公開初日に観て、良くも悪くも大いに面食らった1本。

 聞き慣れない、妙な語呂合わせのようなタイトルの意味が分かりにくいが、“いろんなものを一気に“みたいなことらしい。
 そんないろんなものが一挙に飛び出してくるパラレルワールドを、コメディ風味で炸裂させて、あらゆる映画賞を独占したA24の快進撃を決定づけた1本。

マルチバースの異空間に迷い込んだ中年女性の人生縦走横断の大冒険…とまとめると、わかりやすそうに思えますが、その実、うっかりしていると置いていかれてしまう、ややこしいタイムトラベラームービー。

しかも、派手に時空感が行き来する割に、軸は倦怠期夫婦の再生ドラマで、やたらとシンプル。

こんな見慣れない世界観を、かなりデフォルメして見せた監督のダン・クワンとダニエル・シャイナートコンビの映像デッサン能力と編集力の高さにはクラクラさせられるが“すごく面白いかどうか?“と言われると、それはビミョー…

自分的には“すごくヘンだけど、何か楽しい“映画という印象で、何しろ起伏が激しすぎて落ち着きが無い流れを、今ひとつ手放しで愛せなかった。

 作り手には、別に愛してもらわなくても、ただこのニューワールドを見てもらえればそれでいいんだよね、とか言われそうだが、観終えてみるとだいぶエネルギーを持っていかれていた。

 俳優たちは懐かしさもあり、みんないいが、出色は国税庁の役人を楽しそうに演じたジェイミー・リー・カーティス!
パイルD3

パイルD3