Punisher田中

テオレマ 4Kスキャン版のPunisher田中のレビュー・感想・評価

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)
4.5
ミラノ郊外にある大邸宅に暮らすブルジョア一家に美しい来訪者が突如として現れる。
同居を始めたその美青年は、生まれ持った魅力で一家全員と精神的で肉体的な関係を持つのだった。
いつしか美青年のみが癒しとなり、魅力に依存していた一家は青年が去ったと同時に破滅の道を辿ることに…

古典的なのに新鮮で衝撃的、紛れもなく時間による経過で錆びることのないタイムレスな魅力を持つ作品だった。
ミステリアスだが自分の不安や悲しみを打ち明けたくなるような不思議な訪問者をテレンス・スタンプが見事に演じており、彼自身の持つ魅力がブルジョア家族の運命を堕落させるだけでなく、この作品の持つ様々な疑問点すらも打ち消している。
モーツァルトのレクイエムにより始まる人々の堕落と奇跡はどちらも同様に不恰好で美しく、そして破滅的であり、作品の中で作品を破壊し続けながら再構築していくといった途轍も無い事を次々と成し遂げていく様は「これがパゾリーニだ!!」と僕達の五感に訴えかけているよう。
信仰と生と死が衣装を身につけて舞踏しているようなカオスでありながらもシンプルで洗練された美とパワーを是非、劇場で確かめて欲しい。
そして、無神論者でありながらもパゾリーニが神を求める意志を感じずにはいられない今作、神を信じない方に響くものがきっとあるのでは。