突如現れた青年の美しさに思わず自死しそうになってしまう家政婦さん以降、とくに後半にかけてはトンデモ行動のオンパレード。全編を通して、宗教をこじらせておかしくなっちゃってる人たちのことを茶化すか批判するような表現にもとれる。あるいは監督が青年のことを「神と悪魔が混ざったような存在」と言ったとかなんとかで、なんとなく理解したつもりになってみる。つまり青年が悪魔なのであれば、あるブルジョワの家族がバラバラになって崩壊していくさまを悲劇として見ることもできるし、もしくは青年がほんとうに神だったのであれば、これは自己解放を遂げた人間たちが新たなフェーズへ到達するさまを描いた寓話にもなり得る。たとえばそれは、新たな信仰を生み出し「奇跡」を起こす者、ラディカルな芸術に傾倒する者、頑なに自己を閉ざし沈黙する者、肉欲に走る者、何もかも脱ぎ捨て発狂する者……それら全てが人間の本質だと言わんばかりに。
と、ここまで書き連ねたこと、全て的外れだとも感じる。自分もきっと、あの青年の眼差しに心掻き乱されてしまったんだろう。素っ裸で走り回る親父のあと終幕に出てくる「FINE」を、ファインなどと読み違えてしまった。これで大丈夫、人間はこれが平常運転、、ってか。