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すずめの戸締まりのmaiのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ハーマンのトラウマ回復の過程の三段階モデルというのがあるらしい。

第一、安全の確立
(家族や友人などサポートによるセルフコントロールを取り戻す作業)

第二、想起と服喪追悼
(トラウマのストーリーを語り、喪失を悼むことで自分の歴史を取り戻す)

第三、通常の生活との再結合
(新しい自己の成長。自分を支える信念の発見。新しい関係を育て未来を創造する)


この物語はひとりの少女がトラウマと向き合って立ち直るまでの力強いストーリーである。

昔からもののけや怪物は天災など
誰かにぶつけようのない悲しみや怒りをぶつける象徴として存在してきた。
今回はミミズというもののけが地震の象徴であり、その記憶の象徴だ。
この辺りは民俗学的でもあり、本来のファンタジーの在り方でそのもあると感じた。


地震のたびに心の隙間からあの時の記憶が、封印された恐怖や悲しみが飛び出してくる。
しかしある日それがはっきりと思い出されるようになり、気持ちの制御が効かなくなる。(ミミズ)

感情というのは不思議なもので感じ尽くさないと落ち着いてくれないという性質を持つ。
だから辛くなるたびにしっかり思い出して感じつくす。どんなに辛くてもその繰り返し。(戸締り)

またトラウマを乗り越えていくには
自分を自分として留めるための核となる信念が必要となる。スズメは沢山のひとに出会い、経験し、愛するひとをおもうことでそれを獲得した。(要石)

スズメが傷ついた時の子供時代の自分に出会い、伝えた想いは乗り越えた今だからこそ語れることばであり未来への希望である。
今傷つき、立ち上がれずにいるひとたちへのエールでもある。

ファンタジーのなんたるかを見せつけた今作は新海誠作品のなかで一番深みがある作品だと私は感じた。
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