暮色涼風

夏へのトンネル、さよならの出口の暮色涼風のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

新海誠と押見修造をミックスした感じがある。

"失った大切なもの"と、"これから大切になるであろう何か"。
大事なのは過去と未来どちらか、と天秤にかける。
今この瞬間も、過去にとらわれている人間というのは、浦島現象の渦中で、あっという間にその人の時間は浪費され、今とこれからの大切なものを見失っているのかも知れない。
とても面白いテーマだった。

ラストの、数年後の花城は、一番フィクションでファンタジーだった。
数年もの間、連絡が取れなくなった人を思い続けて、数年越しにあんなに想ってギャン泣きできる女性は百万人に一人もいないと思っている。
記憶も感情も風化して薄れるし、それまでの長い年月に他の出会いもあれば上書きもされてしまうのに、いつ戻るかも分からないその人をずっと想い続けて待ち続けるなんて、無理がある。
だからメールで、「高校を卒業しました」とか「賞をもらいました」と花城から報告が届いた時は、次に来るのは「結婚しました」「子どもが生まれました」なんて報告なのではないかと思って胸が苦しくなってしまった。
だから、ずっと待ち続けていた花城は普通じゃない。かなり特殊な変人だ。こんな子が好きだ。
こんなに綺麗なハッピーエンドを迎えられて良かったねと祝福したい反面、それは都合の良い物語で、現実はもっと残酷で冷たいものだという、虚しい感情が残った。
もしも、現実的で憂鬱なラストにされていたら、それはそれでクソだけど。

取り戻せない今を大事に生きよう。
暮色涼風

暮色涼風